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先生が複業について知りたくなったら読む本

12面記事

書評

前田 央昭 著
学校多様化へ 挑戦を後押し

 「複業」は、教師が学校以外にもさまざまな側面を持って教育活動に当たってほしいという意図で、兼業などを含む意味で使われている。著者の問題意識は、公立学校の教員について、兼業など「複業のしづらさ」を取り除くことで、柔軟で面白い発想が生まれやすい環境になり、学校が多様化するだろうというものだ。
 学校は多様な児童・生徒を柔らかく受け入れることのできる広い懐を持ち、いろいろなアイデアで魅力的な教育を展開することが望ましい。そのためには教職員も均質でなく多彩な方が良いだろうというのもその通り。著者はそのための、おそらく選択肢の一つとして「複業」を推進、応援したいというお考えのようで、兼業の手続などを具体的に紹介している。
 一方、本書にもあるように「複業をする場合、本業にかけられる時間が限られてきます」というのでは、私が校長や教育委員会なら安易に勧めたり認めたりはできない。
 今でも教師一人一人の持ち味は相当バラエティーに富んでいる。また研修や出向(行政、在外教育施設、民間企業、大学など)を含め、教師の仕事をしながら経験の幅を広げることもできる。課題はむしろ、その引き出し方、生かし方や採用、配置などではないか。
 教師としての本務を一人前以上に務めた上で、余力と意欲があるのであれば、兼業など「複業」にチャレンジするのもありだろう。
(2420円 学事出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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