学校の未来をつくる「働き方改革」 制度改正、メンタルヘルス対策、そして学校管理職の役割
16面記事小川 正人 編著
環境の変化読み解き、課題提示
中央教育審議会の副会長などを歴任した編著者は教員の働き方の政策論議にも長く関わった研究者。その編著者によるⅠ部総論「学校の働き方改革―これまでとこれから」は改革の始動と公立学校への影響、平成31年の中教審答申、公立学校の教師の勤務時間に関するガイドラインの「功」と「罪」、令和6年中教審が示した働き方改革内容の「総括、評価」などに言及した。給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)論議の推移や、文科省「令和の日本型学校教育」像を解説し、興味深い。
Ⅱ部では教員勤務実態調査などを再集計しながら、教員の勤務や勤務環境の変化、改革策の一つである「3分類14業務」を取り上げ、業務の外部化・分業化・協業化への教員の意識をそれぞれ分析し、課題を提示した。
Ⅲ部には五つの各論を置く。これまでの働き方改革の取り組みを総括しつつ、教員採用構造の変化にも触れ、新法制下での働き方を論じる章。また、給特法の対象外である国立大学の附属学校、あるいは私立学校の教員の働き方改革の事例を取り上げた章などは、教員の業務観の変化を伝え、参考になる部分もある。併せてメンタルヘルスや安全衛生管理体制、教員の労働裁判例にも一章を割いた。
労働環境の変化を理解したい読者、管理職としてどう対応するかを考えたい読者に、多くの材料を提供してくれる。最後に「本音」の座談会を収める。
(2530円 教育開発研究所)
(矢)