未来のために知っておきたい みんなの子育てスキル
16面記事水野 正司 著
中高生向けの「赤ちゃん学」
本書は、赤ちゃんと向き合う上で必要な実践的スキルの獲得を目指した本である。もちろん、子育て中の親にとっても有意義なのだが、本書のメインターゲットが中高生であるという点に注目すべきだろう。著者は子育てクリエーターとして活動し、主に中高生を対象として「赤ちゃん学」の授業を展開している水野正司氏。これまでに3千人以上の小中高生に向けて実施してきたという。本書では、「赤ちゃんはどうして泣くのか」「赤ちゃんの夜泣きをおさめるにはどうすればよいか」など、赤ちゃんを巡るさまざまな問いが投げ掛けられ、それらの問いへの答えや対処法が丁寧に示される。また、各章の幕間には、赤ちゃんの育て方が必修科目となっているスウェーデンの事例など、六つの興味深いコラムが掲載されている。
子育てに関するスキルは、「子育てをしている人以外の人が持つことにも意味がある」と著者は強調する。言葉で気持ちを伝えることができない赤ちゃんは、泣いて気持ちを訴えることしかできない。泣いている理由が想像できなければ、電車やバスなどでギャン泣きする赤ちゃんに遭遇したとき、単なる「騒音」だと感じてしまうことにもなるだろう。
小さな子どもたちに優しく寄り添うことのできる未来を形づくるためにも、中高生から大人まで幅広い年代の読者に手に取ってほしい一冊である。
(1100円 マイクロマガジン社)
(井藤 元・東京理科大学教授)