パネル調査にみる子どもの成長 学びの変化・コロナ禍の影響
16面記事東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 編
人間関係、進路選択など分析
本書は10年ほどにわたるパネル調査〔同じ個人や同じ世帯に対して一定期間を空けつつ(本書の調査では毎年1度ずつ)繰り返し同じ内容を質問したデータ〕をさまざまな角度から分析し、成果をまとめたものである。
前半では、継続的な調査であることを活用して、調査期間を通じて子どもの生活や人間関係、学習行動、進路選択、保護者の子育て意識などがどう変化したかを(世代間で)比較している。
また、コロナ禍とその前後にデータ収集を行っていることを生かし、コロナ禍が子どもの生活や学び、学校の捉え方にどのような変化をもたらしたのかについても明らかにしている。
後半では、追跡的なデータであることを活用して、子どもたち(とその保護者)が年齢とともにどのような成長・変化をするのか、その変化に影響を与える要素は何か、といった点を分析している。
本書では子どもの学校適応、家庭学習、学習意欲、進路希望といったトピックが取り扱われている他、読書行動や親子関係については、そうした成長・変化にコロナ禍がどのような影響を及ぼしたのかについても考察している。
大変な労力でデータが収集され、特別な分析手法によって豊かな知見が紡ぎ出されている。
第15章のまとめをガイドに、興味のあるところから読むことを勧めたい。
(3300円 勁草書房)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)