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避難所となる学校体育館の空調整備を加速 文科省「令和6年度補正予算案」で779億円

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施設特集

学校体育館の空調設置率はいまだ2割未満

GIGA端末更新やハイスペックな環境整備を支援

 文科省は昨年12月、令和6年度の補正予算案に総額9067億円を計上した。教育DXの推進では、初等中等教育におけるデジタル人材育成に383億円を投じる。具体的には「GIGAスクール構想」第2期に向けた1人1台端末の着実な更新に234億円、推奨帯域を満たしていない学校が8割に及ぶ「通信ネットワーク速度の改善」や、学習系・校務系データを連携する「次世代校務DX環境」の整備に60億円などになる。
 また、生成AIを活用した実証で教育課題に取り組む事業(6億円)や、AIを活用した英語教育を約300のモデル校で進める英語教育強化事業(6億円)を新設したほか、千校を超える公立・私立高校にハイスペックなICT環境を整備する「DXハイスクール事業」には、令和7年度概算要求の107億円に74億円を追加。継続校970校に500万円(重点類型の場合700万円)、新規採択校200校に1000万円(重点類型の場合1200万円)を補助上限とし、必要となる環境整備の経費を支援する。
 加えて、学校での端末の「普段使い」による教育活動を推進する「リーディングDX事業」にも2億円を計上し、教育でのデータ利活用を加速化する方針だ。

体育館の空調設置率を今後10年で95%に

 老朽化がピークを迎える「公立学校施設の整備」には2076億円を盛り込んでいる。計画的・効率的な長寿命化改修を図るとともに、子どもたちの多様なニーズに応じた教育環境の向上を進める。事業内容は、老朽化対策としての他公共施設等との複合化・共用化、非構造部材の耐震対策、避難所としての防災機能強化、洋式化を含めたトイレ改修など。併せて、学校施設の脱炭素化を一層進めるため、校舎などの高断熱化、LED照明、高効率空調、太陽光発電、木材利用の促進(木造、内装木質化)を図っていく。
 中でも、今回の補正予算で779億円を計上して力を入れているのが、災害時に避難所となる学校体育館への空調整備になる。今後30年以内に発生する確率が70~80%と発表されている南海トラフなどの大地震への対策強化が急務となる中で、昨年9月1日時点での空調設置率は18・9%で、年間平均進捗率は約3・4%にとどまっている。
 空調が設置されていない学校体育館の大半は、断熱性能も確保されていない。そのため、夏場は蒸し風呂のような暑さになり、体育や部活動での利用を控える学校が増えているなど教育活動にも支障が生じている。一方で、冬場は凍えるような寒さとなることから、こうした時期に避難所として使用することを考えると、被災者の健康確保が難しくなる公算が大きい。事実、令和6年初頭に起きた能登半島地震の際は、空調が設置されている教室棟を被災者の生活拠点に切り替えた学校が多くあった。
 この状況を受け、体育館に空調を整備する自治体への特例交付金を新設。断熱性能の確保を要件に、関連工事を含めた費用の2分の1を補助することで、設置率を今後10年で95%まで押し上げる意向だ。加えて、社会体育施設を含めた学校施設環境改善交付金にも16億円を計上した。
 また、能登半島地震や豪雨災害で被災した公立学校の迅速な災害復旧を図るため、148億円を計上。同じく、私立学校に14億円、公民館、図書館、体育館、運動場等の公立社会教育施設にも54億円を充てる。

遅れている私立学校にも手当

 私立学校の防災機能強化にも113億円を計上。大規模地震発生時の安全確保や熱中症による事故を防止するため耐震対策や空調設備の整備を推進する。
 私立学校における避難所指定状況は5割だが、8割の私立大学などが地域住民の受け入れや備蓄品の提供など防災拠点としての活動を予定している。しかし、公立学校と比べて吊り天井・外壁などの非構造部材の耐震対策が遅れており、空調設備も約5割にとどまっているのが実態だ。
 そのほか、災害時における電力途絶の危機等に備え、自家発電設備などを整備するとともに、限られた電力の消費を抑制するため高効率設備(空調・照明)の導入、バリアフリー化、多目的トイレ、マンホールトイレなどの整備を推進する。補助率は大学などが2分の1以内、高校などが3分の1以内となっている。

各省が力を入れる避難所の防災機能強化

 文科省以外の各省でも、学校施設の防災機能強化を後押ししている。経産省は、災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費として21億円を計上。避難所や避難困難者が多数生じる施設などに設置するLPガスタンク、石油タンクなどを導入する者に対し、経費の一部を補助する。能登半島地震しかり、近年の大規模災害時には避難所生活が長期化する傾向にあり、電気やガスの供給が停止した場合に備えた対策を講じていく必要がある。そのため、学校体育館にあらかじめLPガスを備蓄しておき、空調や発電機のエネルギー源として活用する対策が期待されている。
 環境省も学校などの避難所施設に対し、災害・停電時にエネルギー供給が可能な再生可能エネルギー設備などの導入を支援するため、20億円を計上。内閣府では災害時に活用可能なキッチンカー・トレーラーハウスなどに係る登録制度の構築に、令和7年度概算要求で計上した1億円に6千万円を上乗せしたほか、全国7カ所に13・6億円を投じ、段ボールベッドやパーティション、簡易トイレ、温かい食事を提供するための資機材や入浴のための資機材等を備蓄し、プッシュ型支援できる体制を強化する。

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