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子どものうつと問題行動・不登校の関連 「うつ」という子どものSOSと学校ができる支援

16面記事

書評

周防 美智子 著
受け止める配慮、大人に望む

 小学校では、昭和56年をピークに、中学校では、同61年から、子どもの数が減少しているが、彼らの問題行動、不登校等の発生は在籍者数と逆比例し増加傾向にある。これは極めて憂慮すべき状態であり、子どもの人権保障上からも大きな課題になる。本書はこのような課題に対して「うつの視点」から考察、検証し、子どもの支援の在り方に有益なヒントを提供する。
 子どものうつ病は存在し、大人のそれと同じく増加傾向にある。それは従来考えてこられたほど楽観はできない。このままにしておけば、対人関係や社会生活に支障を来す恐れがあり、不眠、食欲低下、疲労感等から一日中寝ているという抑うつ状態も招きかねない、と警告している。
 現在は「うつの時代」といわれる社会状況にある。うつ病に関する正しい理解と対応を学校で教え、子どもが行動で発信する「うつ」というSOSを、教師や周囲の大人が受け止められる心配りが必要だと説く。
 終章では、「『抑うつ』学校における子ども支援」を取り上げ、まずは「子ども観察・気づき」の大切さを述べる。子どもの会話の言葉に、不安、恐怖、投げやり、などがみられたら要注意である。また、落ち着ける校内環境への配慮として、教室の教卓上の整頓や板書の乱雑を避ける必要を示す。授業中の緊張が過度にならない配慮も必要だとある。担任時代の私には欠けていた。
(3300円 学文社)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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