知識・技能・教養を育むリベラルアーツ 公立高校社会科入試問題から読み解く社会の姿
15面記事小宮山 博仁 著
市民社会を築くための学び方
公立高校社会科入試問題を素材にしたのが本書の肝。「市民社会を成立させるための社会科の知識は、ディープラーニング」によって「庶民のリベラルアーツ」に「転化」する。「庶民のリベラルアーツ」を「世の中に関心を持ち非認知能力を利用して、社会関係資本をふやし、人と人とのつながりを重視した協働的な学びで得た市民社会を築くための知識・技能・教養」と定義付ける。主読者に大人を想定しているが、現在の教育改革の中で中高校生に求められている資質・能力とほぼ符合すると言ってもよいだろう。
高校入試問題を日本の生活と文化、歴史、経済、政治、未来の社会を考える、グローバル化した社会など第1~6章に分類して、78のテーマを取り上げる。
例えば、万葉集と古今和歌集で詠まれる「梅」と「桜」の数を比較した表と資料を掲載し、その数の違いの変化から文化的背景を考察させる問題(「日本の生活と文化」)では、解説の中で「遣唐使との関係」にも触れ「フカボリ」するヒントを提示した。
フェアトレードのチョコレートを取り上げ、カカオ豆生産国が抱える問題点などを聞く問題(「未来の社会を考える」)ではさらに探究することで半世紀前の「南北問題」の構造と今もあまり変わっていないことに気付ける。
社会科を学ぶ中高校生と共にそんな学び方を追体験してみてはどうだろうか。
(2750円 明石書店)
(徳)