すべての小中学校に「学校作業療法室」 飛騨市の挑戦が未来を照らす
15面記事塩津 裕康 監修 大嶋 伸雄・都竹 淳也・都竹 信也・青木 陽子・山口 清明・奥津 光佳 編著
生活・社会面を専門家が支援
本書は、岐阜県飛騨市で進められている、市内全小・中学校に学校作業療法室を設置し、作業療法士を積極的に活用した先進的な実践を紹介している。
作業療法士とは、生活・社会面に着目し、当事者の乗り越えられない困難に一緒に寄り添い、自ら乗り越える力を引き出すとともに、当事者を取り巻く環境や行動に対して専門的助言を行う心身機能の専門家である。
また、学校作業療法室とは、子どもが、学校や普段の生活で困っていることを自分で解決していくための作戦を作業療法士と一緒に立てて実践し、見直しなどを行うことを通して、自ら解決できる力が育つように支援する教室である。
同市の作業療法士活用方法の特徴は、その専門的知識や技能を生かし、教員・保護者等と連携して、子どもが自分の良さや特性を見立て、自分自身をきちんと理解できるよう支援するとともに、目標達成のための環境を調整する機能を果たしているところにある。この取り組みの背景には、教員がその職能を超えて得意ではない子どもの生活や社会面まで背負いこんでいる現状に対する危機感がある。この課題を解決するために作業療法士を派遣し、学校が目指す教育活動を円滑に実施できるよう支援する施策を進めている。
本書でも指摘しているように人材の確保・育成は大きな課題ではあるが、多くの自治体で取り組まれることを期待したい。
(2200円 クリエイツかもがわ)
(新藤 久典・元国立音楽大学教授)