だから、その話し合いで子どもの「読み」は深まらない
15面記事西田 太郎 著
問いの設定、導入の工夫は
接続詞「だから」で始まるユニークなタイトル。読めばこのタイトルに得心がいく。
授業ではよく話し合う活動を行う。「主体的・対話的で深い学び」となる授業へ改善しているのだから、話し合うことは必要。とはいえ、話し合いではなく、発表し合うことに終始するなど残念な場面に出合う。指導者もこの話し合いで学びが深まるのかと悩んでいる。
本書は、読むという行為はどういうことか、読みの交流はどうあるべきかを理論的に解説し、実践する上で大事なポイントを説く。読みの交流における話し合いをいかにして充実させるか。気付かされ納得できる。
全3章の構成。第1章では、読みの交流に係る理論的な背景を示す。教師の役割として
(1)問いの設定
(2)導入の工夫
(3)多様な考えの整理と価値づけ
―を挙げ、現場の教員が知りたいことを的確に解説。
例えば、全体共有する授業場面は問いに対する答えを決める場ではなく、メタ認知的活動をし再考を促すことが重要という。また、授業終末に振り返りや感想を記述する方法も一辺倒であってはならないと警鐘を鳴らす。第2章では、読みの交流の理論的背景にある問題の所在を「話し合う前・中・後」と場面を区切って明らかにし、続く第3章で、代表的ともいえる文学教材を取り上げ、学習デザインを具体的に提案。学びを多く得られる良書である。
(2266円 明治図書出版)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)