だから教師はおもしろい 子どもたちの未来を育て、一緒に成長する唯一無二の職業
20面記事宮崎 稔 著
自らの実践で伝える教師の魅力
「教師のおもしろさ・醍醐味」を現役時代の実践から振り返り、高学年、それ以外の学年、ちょっとしたアイデアなどに章立てて、人気がなくなってしまった教職の魅力を伝えようと企図した著者の熱意あふれる一冊である。
高学年を受け持ったときの最初のあいさつは「他人に迷惑をかけよう」。教師の言葉に子どもたちは困惑しつつも「迷惑の質」を考え、本人同士の「迷惑」の違いが対立したら、みんなで話し合うという結論にたどり着く。算数の時間には解けた順にペアをつくり、別の解き方を探らせ、できる子たちの進度も大切にする。全校縄跳びの提案は、難度を細分化した進級表で子どもたちの挑戦意欲をかき立てた。
成功ばかりではない。理科授業の充実のためプールのなかった学校に簡易プールをつくろうとして校内を水浸しにしたが、周囲は教師の思いを酌み取り、再挑戦を容認する。また、安全確保など準備を整えた校外の班別自由行動は事前に活動内容を伝えず、反対した管理職が最後に「私の首をかけよう」と決断してくれた。
教職の魅力アップには待遇改善は必要だ。では、働きやすさはどうか。多忙化解消ばかりでない。学習指導要領という大枠の中で、業務の中核をなす授業の裁量はどの程度、保障されているだろうか。”昔だからできた”で終わらせず、教職の魅力でもあった教師の創意工夫を支える環境の復権もまた必要だと本書は語り掛けているのではないか。
(1760円 発行 幻冬舎メディアコンサルティング 発売 幻冬舎)
(矢)