テストパークが導く、学びのミライ
8面記事ミライシードのトップ画面
~紙のテストからデジタルテストへ、学習の定着や校務負荷の削減に手応え~
学習データを利用した個別最適な学びや指導の改善を図るため、GIGA端末を使ってオンラインでテストを出題・解答するCBT(ComputerBasedTesting)の導入が本格化する兆しを見せている。こうした中、(株)ベネッセコーポレーションでは、タブレット学習用オールインワンソフト「ミライシード」上で小テストを実施できる新アプリ「テストパーク」を来年度にリリースする予定だ。そこで、実証研究として先行導入している小学校に取材し、学習改善や校務負荷削減につながる活用の仕方を探った。
テストパークとは
テストパークの個人結果画面
一斉学習・協働学習・個別学習に対応した学習支援ソフトとして、全国1万(2024年6月現在)を超える小中学校で導入されている「ミライシード」。この4月から順次大幅なアップデートが行われており、大規模な機能改善や新アプリが追加される。
「テストパーク」は、そのミライシード上で動く新アプリで、教科書の単元ごとの確認テストを収録したCBTシステム。教員のテスト作成や採点の負荷を軽減し、働き方改革につなげることができる。さらに、自動採点によって授業時間内にテストを返却することでスピーディーな振り返りが可能になったほか、テスト後の解説や解き直し機能によって復習効果を高め、子どもたちの知識の定着や学力向上を支援する。
外国籍児童のテストも言語変換で対応
テストに前向きになる子が増える
北海道・札幌市立中央小学校
端末に途中式を書きながら問題を解く児童
「本校では子どもたちのテストに取り組む意欲向上を目指し、今年度から高学年の算数と理科の単元確認テストにテストパークを活用しています」と語るのは、同校でICTを担当する中里彰吾教諭。
算数の単元確認テストが行われている5年生の教室を覗くと、誰もが真剣な表情で問題を解いている。「端末を使うことで書き直しも楽になり、図形が拡大できるなど自分に合った解き方ができるため、紙のテストよりも前向きに取り組む子が多くなりました」と率直な感想を挙げる。しかも、テスト後には児童自ら間違えた問題を確認。解説ボタンでポイントを押さえつつ、ノート等に解き直すことで学力の定着も図っているという。
また、同校には外国籍の児童も在籍しているが、紙のテストでは日本語が分からず点数が取れていないのか、単元の内容が分からなくて点数が取れていないのかを把握することが難しかったという。「とはいえ、テスト問題を翻訳するには最低1時間はかかり、教員の負担が大きいことが課題でした。でも、今はブラウザにある翻訳機能を利用すれば、テストパーク上の文字をワンタッチで外国語に変換できるようになり、児童も本来の実力が発揮できるようになりました」と語る。
ワンタッチで文章を外国語に変換できる
結果の分析や児童を見取る時間に
校務負荷を削減する自動採点については「採点+集計が5分で完了するため、平均点が低かった問題は翌日には復習を実施できるほか、結果の分析や児童の見取りに時間を使えるようになりました」と手応えを口にする。
なお、テストを持ち帰らなくなり、子どもの学力がどうなっているかを心配する保護者もいたそうだが、面談などの際にテストパークの結果を一覧で見せると安心してくれたという。「今後は以前から利用しているドリルパークの学習データと連携させて、テスト前後の学びにより一層活かせるようにしていきたい」と抱負を語った。
採点時間が半減し、振り返りや定着に注力
ドリルとの併用で学習理解をアップ
福岡県・福岡市立南片江小学校
インタビューに答える児童たち
ベネッセコーポレーションの開発中アプリ「テストパーク」の効果検証に福岡市立小学校の5校が参加。同校では、朝の帯学習で「ドリルパーク」を使って復習を行い、まとめとして「テストパーク」を活用している。この日は6年生が「分数のかけ算」のテストに取り組んでいた。
これまでの活用から西木貴大教諭は「1単元30分かかっていた採点時間が半分以下になりました」と採点時間の効率化を率直な感想として挙げる。「例えば算数では途中式の確認が必要な問題もありますが、端末上でクラス全員分の解答画面をチェックできるので便利」と話す。「テストパーク」は自動採点に加え、こうした部分点の採点もプルダウンで簡単に選択できる。
テスト中に印象的だったのは、テスト前にあらかじめ教員が「ドリルパーク」で同じ単元のパワーアップ問題を配信しておき、早く解き終わった児童にチャレンジさせていたことだ。さらに、テスト後、間違えた問題の類似問題を「ドリルパーク」で解かせるなど、振り返りや知識の定着に活かしていた。
その上で、子どもたちに「テストパーク」について尋ねると、「テスト後すぐに採点してくれるから、間違えた問題の解き直しがしやすい」「理科の問題は図表が拡大して見られるのが便利」に加え、「思考力問題など自分に身に付いた力を確認できるのがいい」といった一歩進んだ声もあった。
テスト中の児童を見守る西木教諭
保護者へ発信し、より効果的な活用を
こうしたICT活用の効果をより引き出していくためには、保護者の理解を得ることも大切と話すのは、同校の酒井美佐緒校長だ。そのため「テストパーク」の導入時において、年度はじめのオンライン学校説明会や学校だよりなどを使って、学校が何をしようとしているのかを積極的に発信。「間違えた問題のやり直しや家庭での補充学習を進める必要性、保護者もテスト結果が端末で見られることなども資料をもとに説明しました」と語る。
また、実際の活用でも先生方の教材研究の時間が増えるなど手応えを感じており、「今後、三者面談などの際に、テストパークの成績画面を利用することにもトライしていきたい」と意欲を示した。
保護者との協力関係の重要性を話す酒井校長
学習改善に向けて即時的に使えるツール
子ども主導の学びに転換
神奈川県・横浜市立旭小学校
物の燃え方について調べたことをプレゼンする児童
玉置哲也教諭の6年クラスでは、”自分たちのクラスをより良いものにしていく“ことを学級活動のテーマにしており、その一つとして「みんなでバーベキューをしたい」というアイデアが生まれた。しかし、安全に実施するためには”火の取り扱い“の知識が必要となるため、理科の単元「物の燃え方と空気」を通して物が燃える性質について学び、自分たちが安全に火を取り扱えることを校長先生にプレゼンすることにした。
そこには「自分が何を知りたくてこの学びをやっているのかを、児童は分かった方がいい」と語る、玉置教諭の意図が反映されている。したがって、本単元の授業でもグループごとに実験方法やプレゼン手法が違っているなど、学ばされるのではない、自ら問いを立てて課題解決していくスタイルに取り組んでいる。
テスト後すぐに振り返りができる
一方、こうした思考力や表現力の育成に加え、知識の定着を確認するために、この春から活用しているのが「テストパーク」だ。「子どもたち主導の学びでも、しっかりと学力に結びついていることが大事」と玉置教諭。本時では、まさに同単元のまとめとなるテストが行われた。
自動採点に加え、記述問題も児童の解答が一覧表示できることから2分ほどで採点が済むなど効率化したことを挙げ、その分テスト後は、児童の取り組む様子から一人一人の学力の定着状況を見極める時間に充てられることを強調する。
採点終了後はすぐに児童に返却した上で、正解率の悪かった問題を取り上げて学んできた内容と照らし合わせるとともに、「なぜ間違えたか」を近くの席のクラスメイトと話し合う時間を設けた。「正解できなかったのはなぜだろうという気持ちがあるうちに振り返りをすると学習意欲が湧いて、知識の定着を図りやすいからです」と説明する。
さらに、「テストパーク」ならではのメリットとして、「総括的評価としてのテストではなく、子どもたちの足りていない部分をチェックし、授業中にもう一度学び直しができるのが魅力。学習改善に向けて即時的に使えるツールになると考えています」と評価した。
話し合いながらテストの振り返りを行う児童たち