スマホ片手に文学入門 検索で広がる解釈の楽しみ方
14面記事小池 陽慈 著
どんな情報 どう生かすか
今や「スマホ」は、腕時計並みにパーソナルな存在となった。その親しみやすいスマホが、身近で有力な「文学入門」のツールとなるという耳寄りな情報を提供してくれるユニークな一書である。国語の読解力を高めるという課題はいつも話題になるのだが、その得策は今もって不透明なままである。本書はその打開の有力な手掛かりを提供してくれる。
本書で取り上げた作品は『ピアノ』(芥川龍之介)、『桜の樹の下には』(梶井基次郎)、『やまなし』(宮沢賢治)という珠玉の短編3作である。それぞれについて、どんな時、どのようにスマホを活用するのか。そうすればどのように読み取りが深まり、どんな力が付くのかということを簡潔明快に解説する。
中学生から高校生ぐらいを読み手と想定した語り口調で論を進めているのだが、国語教育に関心を持つ人々にとっても貴重な示唆が得られる。「スマホ片手に」最も多用されているのは専ら語句の「検索」である。電子辞書機能を活用すればほとんど瞬時に必要な情報が入手できるが、その検索された情報のどこをどのように生かすのか、という著者の手の内が具体的に語られるので、いちいちうなずける。
「令和を生きる人たちに届けたい、これは新時代の国語の教科書だ!!」とは、文芸評論家として活躍中の三宅香帆氏が本書に寄せた帯コピーだが、言い得て妙と納得した次第。
(1870円 笠間書院)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)