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ICT教育の現実と未来 学校現場での実践と課題

14面記事

書評

古壕 典洋・手島 純 編著
当事者が指摘するズレを乗り越え

 GIGAスクール構想がもたらしたICT教育の現実を、学校現場で実践する当事者たちに報告してもらいながら、ICT教育の未来を展望した。
 本書の中核を成す現場からの報告は第Ⅱ部。小学校、中学校、私立高校、特別支援学校、公立通信制高校、海外のICT教育事情を第1~第6章に収めた。
 例えば、小学校現場からは端末活用が学習意欲につながり、協働的な学びによる学習の深化を生む一方、教員の得手不得手によるクラス間の格差、家庭などでの端末利用に伴う学校の責任の範囲、余力のない教員への新たな負担などが課題として指摘され、情報化社会での学校教育の再定義を含めて、GIGAスクール構想の理想と現実のズレに向き合い、次の段階に進むべきだと提案する。
 また、他校種からの報告でも、生徒が自ら課題を見つけ再挑戦する機会をつくり出していることや、生徒への個別評価のフィードバックがしやすくなったなどが導入の良さとして語られる一方、学校、自治体などによる教育の格差の指摘が散見する。
 総論としての第Ⅰ部「ICT教育とは」や、各学校の現実や課題を踏まえた第Ⅲ部「ICT教育のこれから」が本書を補完する。
 できれば現場からの報告に離島・過疎地の学校があると第Ⅲ部「ICT教育のこれから」への理解がさらに深まったのではないか。
(2530円 彩流社)
(吹)

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