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教育とケアへのホリスティック・アプローチ 共生/癒し/全体性

12面記事

書評

吉田 敦彦・河野 桃子・孫 美幸 編著
環境などの現代的課題 見直す

 「これまでの知識や技術の伝達が中心だった学校教育の限界を批判し、そこで見落とされがちだった身体、感情、意志、精神性の成長の全的存在にかかわる教育をめざし…」。『カウンセリング辞典』に「ホリスティック教育」が初登場したのが平成11年(本書「日本を中心とした『ホリスティック教育』の30年」年表)。令和2年発行新装版から一部を引いた。
 「全体」や「癒し」「聖なる」などの共通語源である「ホロス」から造語されたのが「ホリスティック」。「ホリスティック・アプローチ」は例えば、日常的に使われるようになってきたSDGsなど「持続可能性をめぐる課題」を扱う国連やユネスコの文書で「包括的な全体連関に着目する意義を強調する際に」多用され、注目度が高まっている。
 「持続可能な開発」が提唱された一方、地球での環境悪化に歯止めがかからないのは人類至上主義の結果であり、惑星にも及ぶ広い視野での見直しが必要という”ホリスティックなまなざし”が本書全体から感じられる。
 総論としての第1章「ホリスティック・アプローチとは何か」をガイドに「共生/ESD/多文化」「癒し/対話/超越性」「全体性/国家/平和」の3部で構成(第2~10章)し、最後に看護と教育の分野の動向を付した。各分野の研究者による現代的な課題への意識がつづられる。論文に登場する先人たち(ヤン・C・スマッツ、J・ミラー等々)の著作にもいざなってくれる。
(4950円 勁草書房)
(吹)

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