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教育で語られがちなこと その奥にあるもの

12面記事

書評

渡辺 道治・古舘 良純 著
現場で実践積む2人の論争

 学校の構成メンバーは1年限り。教職員は入れ替わっていく。その1年に同僚たちと、こんな論議ができたら教師生活が充実するだろう。
 本書には教育現場で実践を積んでいる2人が自分の考えをぶつけ合う13の論争が収められている。
 冒頭では「学級目標は必要か」と問い掛け、渡辺氏は「大同団結」の目標を掲げる前に「個が立つ」ことが必要なのだから、初期の段階で目標を掲げないと主張。対して古舘氏は掲げる派。言葉を介して子どもたちと教室のイメージを確認するため、言葉の力を大事にするとしている。
 また、教育界で二項対立となりがちな「教える教えない」「叱る叱らない」を取り上げて、渡辺氏は「教えることの責任から逃げない」「叱ることの責任から逃げない」と、教室における一番影響力のある担任の役割の重さ、責任の重さを指摘。古舘氏は、最近の教育現場に「変な優しさ」があること、教えることとともに「どう育てるか」が大切であり、「下半身はどっしりと、上半身はゆったりと」という教師の立ち姿がものをいうと述べる。
 他に「学級がうまくいくとは何か」「教育実践追試の罠」「教科書をどう使うか」「黄金の3日間をどう使うか」「教師としてのブレイクスルーはあるのか」など。
 正解を求めるのではなく、「バランスを保った中道の生き方」を考えるヒントが得られ、教師力を高めることができる。
(1870円 東洋館出版社)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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