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生きとし生けるもの この国での災害との向き合い方

12面記事

書評

齋藤 幸男 著
被災者の思い大切に減災願う

 東日本大震災の際に教頭として避難所運営に当たり、高校校長退職後も各地の震災等の関係者との対話を重ね、防災教育や命の大切さを広める活動を続けておられる著者の思いがいっぱいに詰まった一冊である。
 第1章は、東日本大震災のご遺族(その中には教員もいる)や、自らも被災者でありつつ生徒の安否確認や被災状況の把握等に当たった教員たちの苦悩や心の傷が描かれる。
 「君の死は受け入れ済みと思っていた遺影の蔭の箱見るまでは」
 深い悲しみが胸を打つ。
 また、新たな生活をスタートさせる際に、「作られた日常」であっても「いつも通りの生活」が貴重であることがよく分かる。
 第2章は、台風や豪雨の被災地の方々の声を記録にまとめたもの。そうした現実を地域での防災、減災につなげてほしいという願いが込められている。避難所でのコミュニケーションや正しい情報発信の大切さなどが、実例から説得力のある形で示される。
 第3章は、震災やコロナ禍での被災者、避難者に安心を届ける医療従事者や、映画製作などの表現者の言葉である。著者の活動や関心の幅広さが表れている。
 著者は、不安社会を生き抜く日本人の宿題として「子ども哲学」(哲学的対話)を挙げている。本書もその哲学的対話の一つだろう。
(2090円 学事出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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