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教師の流儀 正解のない問いを考える

12面記事

書評

川上 康則 著
従来の指導観から脱却促す

 昨年4月のこども基本法施行、12月のこども大綱閣議決定により「こどもまんなか社会」の実現が求められている。現代はさまざまな面で子ども中心の考え方に変化している。一方で虐待や貧困、学校では従来型の教師の指導が問題となり、「指導死」なる言葉も生まれた。
 著者は現役の主任教諭であり、公認心理師などの資格を持つ特別支援教育士スーパーバイザーである。著書も多数で、本書は教育誌の連載を加筆修正したものである。
 本書の中で、著者は従来行われてきた教師の指導スタイルを課題と捉えている。採用面接で多く聞かれる教員志望動機が「恩師の先生」である。つまり多くの教員が以前自分自身で受けた教育スタイルを範としている。
 しかし、著者は「歪んだ教育観」として、「懲らしめ型指導」「五大禁じ手」などを例示する。特に「権威勾配」という教師にありがちな状況を問題視している。また、教師の心理面から教師が権威に固執することや、あるべき姿にこだわる理由を分析している。その上で教師の心の持ち方をさまざまな場面を例にアドバイスしてくれる。
 現代は、戦前教育から戦後民主主義教育に変わった時期に匹敵する変革期かもしれない。それまで大人、とりわけ教師が継承してきた価値観や指導観の変革が求められている。特にこれから教師を目指す学生や若手教師に読んでほしい。
(2200円 エンパワメント研究所)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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