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伝わる図解化

14面記事

書評

加藤 拓海 著
分かりやすさの弊害も指摘

 伝える内容を分かりやすくするために「図解」という方法がよく用いられる。受験参考書などに見事な図解が掲載されていて感心した思い出がよみがえる。また、新聞で犯罪の仕組みなどが図解されると分かりやすい。「図解」という伝達技法は、今や日常生活の中に定着し、親しまれ、大きな貢献をしている。
 本書は、「伝わる図解化」という書名にある通り「伝わる」という本質に特化した図解の在り方を端的、明快に解明し、解説した専門書である。専門書ではあるが決して難解ではない。豊富な具体例を生かしながら、次のようなキーワードで「伝わる図解」の技法を体系的に解説してくれている。
 (1)図と図解の違い(目的と要素と方法)(2)伝わる図解とは(わかりやすさの文法)(3)図解の三つの手順(整理・整頓・図化)(4)図解化の基本の型(図解の枠組み9項目)。
 このようにすれば「わかりやすい」という「図解のポイント」の提供が本書の役割であるが、本書はそのことの弊害にまで筆を進めている点に大きな特徴がある。図解による分かりやすさの「価値と弊害」は「表裏一体」で、「わかりやすさに慣れてはいけない」と説く。「書籍の要約サービスや動画の倍速再生」に慣れると、分かりにくさへの耐性が失われ、思考力や人間味まで失われかねない。分かりにくさも拒まない姿勢も大切との警告に共感を覚えた。
(1980円 ディスカヴァー・トゥエンティワン)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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