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〈クレイス叢書〉04 「深い学び」と教え方の科学 認知心理学による学びの深化論

13面記事

書評

北尾 倫彦・岡本 真彦・北村 瑞穂・森 兼隆 著
最新理論を基に実践例紹介

 本書は、認知心理学の知見に基づき、深い学び方と教え方の関連を示し、豊富な実践例と共にその最新の理論を紹介した本である。令和2年に刊行された前作「『深い学び』の科学 精緻化、メタ認知、主体的な学び」では、「主体的・対話的で深い学びとは何か」が解き明かされたが、第二弾に当たる本作では深い学び方へと導く教え方に焦点が当てられている。全九章からなる本書では、「ワーキングメモリ」「メタ認知」「精緻化論」「新統合理論」などの理論的解説が行われると同時に、「対話的な学び」「個別最適な学び」「協働的な学び」など、現代の教育における重要トピックが丁寧に扱われている。
 例えば、「学びを深める対話の役割」について解説した章を読めば、学びの場にペア学習を取り入れる際には、子どもの対話調整力を事前に確かめることが必要であることに気付かされる。また、別の章では、学びを深めてゆく上でメタ認知が重要であることが強調され、発達段階に応じて児童のメタ認知を指導する方法が紹介されており、大変参考になる。理論に対応させながら実践例が提示されるため、読者は学びを深化させるための教え方について具体的にイメージすることができ、指導の際に注意すべきポイントが押さえられる。本書で描き出されている数々の知見を踏まえるならば、深い学びを実践するための確かな足場を獲得することができるだろう。
(2090円 図書文化社)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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