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学校給食の衛生管理に必要な対策とは

11面記事

施設特集

衛生的な調理環境の整備が求められる

 学校給食は、子どもたちの心身の成長を支える上で欠かせないものであり、食中毒などを発生させないためにも衛生管理を徹底しなければならない。ここでは、そのために必要とされる対策や設備について紹介する。

食品の納入から配食に至る衛生管理の充実を

 学校給食は給食センターで調理した給食を各校に配送するセンター方式と、各学校が独自の調理室と職員を配置し、その学校で給食を提供する自工方式の2種類がある。いずれも「学校給食衛生管理基準」によるHACCPの考え方に基づき、食品の納入から配食に至る調理工程の中で起こりうる危害を極力少なくするための衛生管理に努めることが義務付けられている。
 とりわけ、成長期の子どもは大人よりも感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向がある。また、食中毒が発生すると、学校や給食に対する信頼が損なわれ、子どもたちの食への不安につながることがあり、食に対する興味や関心を削ぐ恐れもある。
 したがって、衛生的な調理環境の整備、調理従事者の衛生管理意識の向上、食材の衛生管理など、ハードとソフト両面から学校給食の衛生管理の充実を図っていくことが求められている。

調理施設・設備の改善のステップ

 調理場を衛生的な環境に改善するには多くの時間と経費を要するため、段階的かつ着実にステップアップしていくことが必要になる。まずは汚染作業区域と非汚染作業区域に明確に区分した上で、食品の種類ごとにそれぞれに調理用の器具を備えるとともに、下処理用、調理用、加熱調理済食品用など調理過程ごとに区別する。また、調理室は空調・換気設備によって、温度は25度以下、湿度は80%以下に保つように努め、定期的な点検や保守を行うことが第一となる。
 次に、近年では細菌の繁殖や跳ね水による食品への二次汚染を防止するため、床が乾いた状態で作業ができるドライシステムに改善することが求められているが、既存のウェットシステムであっても調理設備や器具、作業着等のドライ運用を採用することが重要になる。
 冷蔵・冷凍設備の管理では、食数に応じた広さを確保した上で、原材料用と調理用に分けて共用を避け、庫内を常に整理整頓して清潔に保つ。廃棄物容器の管理では、ふた付きの専用容器を保管場所に備える。
 加えて、作業区分ごとに温水対応の手洗い設備を充実するとともに、検収室は納入業者との食品の受け渡しも含め、外部からの汚染を受けない構造にしなければならない。また、調理に使う機械および機器等は可動式にするほか、作業導線が一方向になる機器の配置にすることも重要だ。
 さらにノロウイルスによる食中毒の発生では、手指を介してドアノブ等から汚染するケースが多い。特に不特定多数がトイレを使用するとウイルスや細菌等の汚染の危険性が高くなることから、学校においては調理従事者専用トイレを整備することも欠かせない。その際は個室内の手洗い設置も必須となる。

異物混入対策となるエアーシャワーの導入も

 そのほか、異物混入対策としては、給食センターでは作業者に付着したホコリや髪の毛を除去するエアーシャワーが導入されているが、自工方式の学校でも採用されるケースが増えている。自動ドアや手指消毒器と連動し、より衛生的な環境を実現できるシステムも好評だ。
 また、調理器具や作業台を徹底的に洗浄する洗浄設備や、大量の食器を効率的かつ衛生的に洗浄する食器洗浄機、冷蔵庫、冷凍庫など食品の温度を適切に管理するための設備なども年々進化している。給食を配膳する食缶も、優れた保温、保冷効果のあるステンレス製が登場しており、これらの最新の知見を取り入れた設備・機材も活用し、学校給食の衛生管理の改善・充実に活かして欲しい。

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