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「学校施設・設備整備の課題に関する調査」まとめ

10面記事

施設特集

 学校施設のバリアフリー化は「校舎、屋内運動場への多目的トイレ(車いす利用者が使用できる)の設置」の実施割合が高く、すでに導入した防犯設備は「防犯カメラ」が圧倒的――。全国の市区町村教育委員会を対象に日本教育新聞社が「学校施設・設備整備の課題に関する調査」を実施したところ、そうした結果が明らかになった。調査は7月下旬、全国1736市区町村教育委員会に用紙を送付。377教委の学校施設・施設整備担当者が回答した。回収率は21・7%。

学校施設のバリアフリー化

 インクルーシブ教育システムの構築に向けては、学校施設のバリアフリー化が求められる。文科省の「新しい時代の学校施設検討部会」が令和4年3月にまとめた報告書では、「令和7年度までの整備目標を踏まえた取り組みの加速化が必要」としている。
 調査では、各自治体が管轄する学校施設ですでに整備を終えた、または今後整備を進める予定の取り組みを、複数回答で選択してもらった。
 「校舎、屋内運動場への多目的トイレ(車いす利用者が使用できる)の設置」が253自治体(全体の67・1%)、「校舎、屋内運動場へのスロープ設置(段差解消を目的)」が227自治体(同60・2%)と、多くの自治体で取り組まれていることが分かった。「校舎へのエレベーター設置」も162自治体(同43・0%)あった。
 その一方で「医療的ケアの実施に配慮したスペースの確保」は17自治体(同4・5%)にとどまった。「その他」は27自治体(同7・2%)で、自由記述の中には「視覚障害者用誘導タイル」(北海道・東北・市)、「移動式スロープや可搬型階段昇降機」(関東・町、他)などの回答があった。
 令和3年度の本紙調査でも同じ内容を質問している。回答した自治体やその数(本年度377教委、令和3年度461教委)が異なるため単純に比較はできないが、参考として当時の割合を見てみると、「校舎、屋内運動場への多目的トイレ(車いす利用者が使用できる)の設置」が全体の68・3%、「校舎、屋内運動場へのスロープ設置(段差解消を目的)」が同63・3%、「校舎へのエレベーター設置」が同39・9%、「医療的ケアの実施に配慮したスペースの確保」が同2・6%となっていた。

防犯設備の導入状況

 学校への不審者侵入防止に向けた防犯カメラ・オートロックシステム・非常通報装置などの整備について、文科省は昨年度から来年度の間、集中的な支援を実施することを明らかにしている。
 調査では、各自治体が管轄する学校施設について「すでに導入したもの」と「現在導入を検討しているもの」を聞いた。
 「すでに導入したもの」については「防犯カメラ」が260自治体(全体の69・9%)と圧倒的に多く、「オートロックシステム等」が89自治体(同23・6%)、「警察直通の非常通報装置」が48自治体(同12・7%)で続いた。
 「その他」は27自治体(同7・2%)で、多くは「民間警備会社への非常通報装置」「機械警備」だった。
 「現在導入を検討しているもの」についても同じ傾向で、「防犯カメラ」が92自治体(全体の24・4%)、「オートロックシステム等」が48自治体(同12・3%)、「警察直通の非常通報装置」が13自治体(同3・5%)となった。

防災機能の強化

 1月の能登半島地震や9月の能登半島豪雨をはじめ、国内では毎年のようにさまざまな災害が発生している。9割以上が避難所に指定されている市区町村立学校には防災機能の強化が求められ続けている。
 今回の調査では、各自治体が管轄する学校施設の避難所機能の整備ですでに取り組んだこと、今後取り組む予定のあることを13項目の中から選んでもらった。
 全体の10%を超えたのは「備蓄倉庫」(207自治体、全体の54・9%)、「情報通信設備」(189自治体、同50・1%)、「避難スペースへの空調(冷暖房)設備」(146自治体、同38・7%)、「自家発電」(108自治体、同28・6%)、「マンホールトイレ」(94自治体、同24・9%)などとなった。
 「その他」は26自治体(同6・9%)で、「災害による停電時に、自動車会社との協定に基づく電気自動車等を活用し、避難所となる体育館の天井照明などへ給電する取り組み」(近畿・市)という回答があった。
 令和4年度の本紙調査でも同じ内容を質問している。こちらも回答した自治体やその数(本年度377教委、令和3年度415教委)が異なるため単純に比較はできないが、参考として当時の割合を見てみると「備蓄倉庫」が全体の57・1%、「情報通信設備」が同49・2%、「自家発電」が同28・7%、「避難スペースへの空調(冷暖房)設備」が25・8%、「マンホールトイレ」が23・6%などとなっていた。
 「すでに取り組んだこと、今後取り組む予定のあること」が20%を超えた項目の数値はほぼ同じだが、「避難スペースへの空調(冷暖房)設備」は令和4年度より本年度が10㌽以上増えている。

ZEB化についての取り組み

 国として2050(令和32)年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルの実現を目指すことが示されており、学校施設などの建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保が求められる。
 ZEBとはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物のこと。文科省は3月、学校施設のZEB化を検討するための足掛かりとして「学校施設のZEB化の手引き」を作成した。
 このことに関連して、各自治体が管轄する学校施設についてZEB化に取り組んでいること、今後取り組む予定のことについて8項目の中から選んでもらった。
 「太陽光発電設備の設置」が181自治体(全体の48・0%)で圧倒的に多かった。「窓の断熱改修」が77自治体(同20・4%)で続き、「屋根の断熱改修」67自治体(同17・8%)、「自動点灯ライトの設置」63自治体(同16・7%)、「外壁の断熱改修」58自治体(同15・4%)、「蓄電システムの設置」47自治体(同12・5%)が全体の10%を超えた。

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