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マンホールトイレを含め、災害時の避難所におけるトイレ確保を推進

9面記事

施設特集

マンホールの上に便座やパネルを設置(左)、貯留管と貯留弁付マンホールを敷設(右)

神奈川県小田原市

 小田原市では、令和5年3月に「災害時トイレ確保計画」を策定し、避難所等へのマンホールトイレ整備など災害用トイレの確保を進めている。そこで、策定した目的や現在までの整備状況について、防災部防災対策課の遠藤裕介係長に聞いた。

快適なトイレ環境の維持が不可欠

 「これまでの大規模災害時には、断水や停電、給排水管の損壊などで水洗トイレが使えなくなり、避難所のトイレ確保や衛生環境の悪化が大きな問題になりました。本市でも神奈川県西部地震(マグニチュード6・7)を想定する中で、被災者の生命や健康を守るためには、快適なトイレ環境の維持が優先事項であると認識しており、順次整備を進めているところです」と遠藤係長。
 マンホールトイレの整備は、広域避難所1次施設である小中学校25施設から順次進めている。トイレの必要個数は、内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」の基準を踏まえ、避難者約75人あたり1基とし、全640基(マンホールトイレ280基、仮設トイレ150基、携帯トイレ210基相当)を整備する計画だ。
 「地震などによって水洗トイレが使用できなくなった場合、まずは携帯トイレや仮設トイレで急場をしのいでもらい、下水道本管の被害状況などを確認した上で、被災後4日目以降はマンホールトイレと仮設トイレを併用して運用。20日目以降はマンホールトイレのみで運用するかたちを想定しています」と説明する。

貯留機能を有し、直接下水道管にも流せる

 マンホールトイレを整備するにあたっては、愛知県豊田市と豊川市での事例を視察した上で、貯留機能を有することで臭気の発生を抑制し、衛生的な環境を保つことができる、積水化学工業の「防災貯留型トイレシステム」を採用した。
 「他のシステムでは下水道本管の安全確認が取れるまでの一時貯留機能がなく、貯まった排泄物の汲み取りが必要になりますが、本システムは排泄物を地下管路内に貯留し、その後、プール水などを用いて直接下水道管に流せることが決め手になりました」と使い勝手のよさを挙げる。災害の状況によってはバキューム車が調達できず、し尿処理が滞ってトイレが使えなくなることも考えられるからだ。
 また、整備費用についても国交省の「社会資本整備総合交付金・防災安全交付金(都市防災総合推進事業)」によって2分の1は補助を受けられるため、市の持ち出しが抑えられることも後押しになった。

設置訓練後の評価に手応え

 マンホールトイレは、すでに令和5年度に2校整備し、今年度は5校が整備中である。各学校には想定される避難者数に応じた基数を整備するが、通常型パネル・便座とバリアフリー型パネル・便座のほか、男性用小便器(2基連結型)を1セット設置しているのが、他市にはない特徴だ。
 「災害時には避難所開設に係る自治会や教職員などの関係者、市職員が便座やパネルを組み立てることから設置訓練も実施していますが、実際の設置・使用方法を確認することで評価も高まっています」と手応えを感じており、令和7年度以降も、順次計画を進めていく意向だ。

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