中高生のための「探究学習」入門 テーマ探しから評価まで
12面記事中田 亨 著
トラブル防ぐ注意点も提示
新学習指導要領の「総合的な探究の時間」には評者も大いに期待している。本書は、「総合的な探究(学習)」を実りあるものにしたいという強い願いを込めて、研究者の視点からアドバイスをし、エールを送るものだ。
探究学習はテーマが命。とはいえ、学校でそれにこだわり過ぎると時間が足りなくなる。いまいち気に入らないテーマでも、取り掛かって手を動かすべし、と著者は背中を押す。平凡そうなテーマでも、深掘りすれば面白いものに出合えることもある。その例に挙げられている「偶然から生まれた発明や発見」(トランジスタ、ステンレス、抗生物質など)の話は、探究の楽しさを感じさせてくれる。
仮説や予想と違ったときこそ大チャンスというのは、その通り。今の忙しい学校は、教科書通りに暗記することを優先し過ぎて、学習をつまらないものにしていないだろうか。
中等教育で見逃されそうな「事故やトラブルを防ぐための注意点」が分かりやすく示されているのもありがたい。
著者が院生時代に教わったという「下手でも気にするな」「専門家の言うことを鵜呑みにするな」などは、ぜひ生徒たちにも伝えたい。
「教育とは、教え子が好きな味の料理を出すことではなく、味覚を変えること」というある哲学者の言葉が、探究のみならず教えるということの本質ではないだろうか。
(924円 光文社(光文社新書))
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)