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答えのない教室 3人で「考える」算数・数学の授業

14面記事

書評

梅木 卓也・有澤 和歌子 著
多様な解き方 試す手法とは

 「答えのない教室」(Thinking Classrooms=考える教室)は、カナダの元高校教師、リリヤドール教授が提唱する教育手法である。その狙いは、より多くの生徒が、より自然な形で長い間考えるようにすることにある。
 教授の問題意識の背景には、幼稚園から高校まで多数のクラスを調査した結果、「2割の生徒が2割の時間しか考えていない」と分かったことがある。皆さんのクラス、授業はどうか。生徒はどれくらい考えているだろうか。
 具体的な姿としては、事前に解き方が分かっているような問題ではなく、さまざまな解法を試したり話し合ったりできる問題を提示し、3人ずつのグループで話し合いながら学びを深めていく。「まとめ」の後には、グループ内でできたことが一人でできるかを確かめる「自分チェック」も行う。もちろん授業前の準備や生徒の理解度の把握も重要だ。
 本書の優れた点の一つは、この手法を完全なものと宣伝するのではなく、実践者のインタビューも含め、課題や難しさ、試行錯誤の例なども表出している誠実さにある。
 授業を生きた学びの時間にしたいと思わない教員はいないだろう。「答えのない教室」は真っすぐにそれを目指す一つの挑戦である。
 授業時間(梅木氏の高校の1時限は80分)などの違いもあるが、「考える授業」を目指す上で参考になる点は非常に多いと感じる。
(2420円 新評論)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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