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災害に備えた避難所の空調整備とは

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たなべ 雄一 公明党 名古屋市会副議長に聞く

 愛知県名古屋市では、避難所の防災機能を高める空調設置に併せ、災害時に都市ガスが途絶した場合でも備蓄したLPガスを活用して空調を稼働できる、防災減災対応システム「BOGETS」を配備することを決めた。そこで、たなべ雄一市会副議長に、今回の整備に尽力した経緯や意図について聞いた。

懸案だった都市ガス停止時の対策

 名古屋市は公明党が熱中症対策として主導したこともあり、普通教室の空調については全国でも比較的早い時期に整備されましたが、次の体育館への整備は財源の問題もあって後塵を拝しました。ただし、市として他のさまざまな事業との調整の中で、中学校で2カ年度、小学校で5カ年度、計7カ年度かけて体育館に空調を整備する計画を進めているところです。
 また、本市は安定したエネルギー源として都市ガスの供給インフラが整備されており、普通教室と同じく体育館に導入する空調も、都市ガスを利用したGHPを採用しています。しかし、災害時の復旧では、電気に比べると安全点検等が必要なガスは時間がかかる可能性が高い。それゆえ、都市ガスが途絶した場合に避難者が最低3日間(72時間)を乗り切るための対策が、私や心ある議員の中では懸案になっていました。

「BOGETS」を小学校体育館51カ所に整備

 こうした中、東京都足立区が都市ガスのバックアップにLPガスを使用するシステムを全小中学校の体育館に導入したと聞き、その視察先で初めて紹介されたのが「BOGETS」でした。まず、こんな手段があったのかと驚くと同時に、劣化せず長期保管が可能なLPガスは備蓄にも向いていると分かり、非常に現実味のある対策だと感じました。そこで、すぐさま市に働きかけることにしたのです。
 その甲斐もあり、令和6年度から10年度までの5カ年で、全小学校の体育館(260カ所)に空調を設置する計画に併せて、避難所の収容人数が過密になると予想される地域の体育館には「BOGETS」を配備することに決まりました。各体育館には14本のLPガス容器を備蓄し、万が一の原料の備えを確保。今年度は整備する52校のうち22校を予定しており、最終的には51校への整備を完了する計画となっています。

地域の力を高める取り組みと両輪で

 災害時でも避難所のライフラインが正常に機能することは、地域の人たちの衣食住や情報すべてにおいて命綱となります。とりわけ、避難所生活が長期化するほど、避難者の健康を守る空調を維持することが重要になり、それは災害関連死など二次災害を防ぐためにも欠かせない備えになると考えます。
 それだけに、いざというときに使えなくては意味がありません。「BOGETS」はタッチパネルの解説や音声ガイドにより、専門業者でなくても安全かつ簡単に操作が行えるようになっていますが、それでも防災訓練の際には必ず試してみるなど日ごろからの準備は必要です。
 また、実際の避難所の運営は自主防災組織だけでは限界があるため、今年の夏には地元の子ども会と一緒に親子で参加する避難所体験会を実施し、消火訓練や簡易トイレの準備などに携わってもらいました。「BOGETS」などの防災・減災機能の整備に加え、このような地域の力を高める取り組みを進めることにより、不慮の災害に備えていきたいと思っています。

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