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AIを活用した卒業アルバム制作で教員の労力を削減

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 近年、学校現場では「過労死ライン」を超えて勤務をしている状況であり、教員の働き方改革が喫緊の課題となっている。その中で、AI(人工知能)の活用が注目されており、卒業アルバム制作の現場でも、担当する教員の負担を軽減できると注目されている。

時間と手間が増えている卒業アルバム制作

 学校現場における生成AIの利活用については、文科省がガイドラインを作成するとともに、有効な利活用方法について有識者による検討会議を開設し、検討を進めているところだ。その中では子どもの教育だけでなく、教員の働き方改革に寄与することも期待されており、いち早く導入する学校が増えているのが、AIを活用した卒業アルバム制作サービスといえる。
 従来の卒業アルバム制作は、写真選定、レイアウト、校正など、教員が膨大な時間と手間をかけて行われていた。中でも卒業アルバム作りに使う写真は、今日では日頃からスマートフォンやデジタルカメラで撮り溜めた、数千枚におよぶ中から選択する必要がある。
 しかも、少子化に伴って強まる、保護者の平等意識に応えるため、子どもたちの写真をもれなく均等に配置しなければならない。それゆえ、登場回数を目視で1人ずつ数え、アルバム業者に写真の入れ替えを何度も指示するなど、写真を選別するだけでも大変な手間になっている。

顔認証で写真を自動セレクト、誤字脱字もチェック

 こうした中、AIを活用した卒業アルバム制作では、顔認識技術を用いて、卒業生全員の写真の中から写りの良い写真やおすすめのシーンなどを自動的に選定。重複や欠落を防ぎ、差し替える写真の候補も自動でピックアップできるなど、作業時間を大幅に削減できる「写真選定の自動化」が大きな特徴になっている。
 また、AIが写真の内容や構成を分析し、最適なレイアウトを自動生成できるのも優れている点だ。これにより、教員にデザインに関する専門知識がなくても、プロ顔負けのレイアウトが作成できる。加えて、文字認識によって卒業文やメッセージなどの誤字脱字を自動的に検出し、校正作業を効率化できるメリットもある。したがって、すでに導入した学校の中には従来よりも作業時間が半減したところもあるなど、文科省も教員の働き方改革につながる事例の1つとして紹介している。
 さらに、児童生徒ごとのパーソナルなページを挿入する、あるいはクラスや部活動ごとの卒業アルバム制作も増えている中で、AIが個々の卒業生の情報や写真を分析し、一人一人の個性を引き出すアルバム作りも可能になっている。

クラウド上でいつでも見られるサービスも

 卒業アルバムの制作には、少子化によって印刷単価が上がってしまい、業者に依頼することを断念する学校もあるなど、継続することが厳しくなっているという問題もある。このため、地方など卒業生が少ない学校では、インターネット上のフォトブック・サービスを利用して、卒業アルバムを自主的に制作するところも増加している。その中で、最近ではAIも活用しつつ、子どもたち自身が思い出を振り返りながら写真を選び、卒業アルバムを制作する動きも起こっている。
 卒業アルバムのデジタル化では、クラウド上に公開し、スマートフォンやタブレットからいつでも見られるサービスも人気を呼んでいる。印刷アルバムより多くの写真を掲載できるとともに、動画や音声も掲載できるからだ。しかも、教員の重荷になっていたアルバム代金の集金は、個別のネット決済にすることで解消できるほか、納品後も子ども自身が写真や動画、BGMなどをカスタマイズでき、オリジナルのアルバムを作成・保存できるといったデジタルならではの魅力も備えている。
 このように、AIをはじめとしたデジタル技術の活用は、卒業アルバム制作の現場に大きな変革をもたらしている。そこでは省力化ばかりでなく、卒業アルバムの新たな表現や見せ方にも可能性が広がっていくことだろう。

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