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思春期の子どもと親、それぞれの自立 50歳からの学び直し

18面記事

書評

田中 由美子 著
中学生の「本音」作文と向き合う

 子育て後の第二の人生として、国語塾・鶏鳴学園の講師となった著者が、各学期の山場として位置付ける中学生の「作文を読み合って話し合う授業」を通して、生徒の自立に向けた課題に向き合っていく。「中学生たちが抱える問題」として作文内容を受け止め、「学校編」「家庭編」に整理した2章に注目したい。
 そこでつづられる生徒たちの「本音」や「現実」は、普段の学校での友達、教師に開示されるものとは異なる。例えば「言いたいことは直接相手に言いなさい」という一方で「相手を傷つけないように、言葉遣いに気を付けなさい」と指導する教師の言葉に、相手に言いたいことを言ったら、いじめたと教師にとがめられると反感を持つ生徒の姿が浮かぶ。
 「嫌がらせて傷つけることが目的でないなら、批判し合うことは正しい。逆に『傷付けてはいけない』が第一では、気を遣い合うばかりで、関係を築くことも、成長し合うこともできない」。著者が教育活動を通してまとめ、本書の1章を成す小冊子「君たちが抱える問題の本質と、その対策」の一文だ。
 生徒の作文に答える形で、著者は傷つけてはいけないというのではなく「『裏で嫌がらせをしてはいけない』と教えるべきではないでしょうか」と述べている。
 生徒の悩みの解決策を模索する中で、自身の学び直しや自立を意識していく。教育書とも自己啓発書ともいえる一冊である。
(1540円 社会評論社)
(矢)

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