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子どもカウンセリング いじめ いじめられちゃった・いじめちゃった・いじめを見ちゃった 自分を助ける方法

18面記事

書評

寺戸 武志 著
被害・加害・傍観3者の視点で

 平成25年、「いじめ防止対策推進法」の制定で、いじめ問題に社会全体で向き合うことが定められた。各学校は「学校いじめ防止基本方針」策定、いじめ防止対策組織の設置、いじめ防止の指導などが義務付けられた。いじめ防止に向けて本気で立ち上がる契機となったことは確か。それから10年余り経過したが、いじめはなくならない。
 本書は、その事実に向き合い、いじめの被害者、加害者、傍観者の三つの立場から解決に導く内容である。対象は子どもたちだが、教師など教育関係者、保護者や地域の大人たちも読んでほしい。社会全体がもっと子どもたちのリアルな姿に関心を寄せたい。
 いじめは深刻な社会問題だ。三つの立場を「~ちゃった」と俗語的な印象の表現にしてあるのも、ハードルを低くし、いじめ問題から目をそらさず向き合おうという意図を感じた。学校で起こりそうな事例を七つに絞って、漫画と分かりやすい簡潔な文章で解説しているのも魅力。
 どのテーマでも被害者に対しメッセージがつづられている。共通して「一人でできないとき、気持ちが伝えられず難しいとき、家の人や先生に話そう」とある。話してもらうためには信頼されてこそ。子どもたちからの切実なSOSを真摯に受け止め解決に導く大人でありたい。これは私たち大人へのメッセージでもあると思えた。
(1870円 少年写真新聞社)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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