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大学における教員養成の未来「グランドデザイン」の提案

14面記事

書評

日本教師教育学会 監修 鹿毛 雅治・勝野 正章・牛渡 淳・岩田 康之・浜田 博文 編
修士レベルのモデル示す

 本書は、教員養成の高度化に向けた将来像を描き出すべく、日本教師教育学会が科学研究費〔基盤研究(B)〕の助成を受けて行った研究活動の成果をまとめた本である。本学会は、大学における教員養成の再構築を目指し、教員養成の「多様性」と「共通性」をともに重視するような「グランドデザイン(基本的な考え方と提言)」と、それを実現するための具体的なモデルを提案している。これからの時代、教師が「自律的でクリエイティブな高度専門職」として成長し続けていくためには、学部段階の養成のみでは不十分だという認識の下、本書では、教員の基礎資格を大学院(修士)へとレベルアップした教員養成システムのモデルが詳細に示されている。
 また、本書では「グランドデザイン」を基盤として、教師教育を専門とする14人の執筆者が、それぞれ独自の視点から議論を展開しており、非常に読み応えがある。教師の学びの主体性を担保するためのアイデアやフィンランドにおける教員養成の実態など、トピックは多岐にわたる。また、補章では、2023年に実施された「グランドデザイン」を巡る質問紙調査のデータも示されている。
 これからの時代に対応した新たな教員養成の在り方を模索してゆくためにも、現役の教師や教師を目指す人、また教員養成に携わる全ての人に、ぜひ手に取ってほしい一冊である。
(2640円 学文社)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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