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人はいかに学ぶのか 授業を変える学習科学の新たな挑戦

14面記事

書評

全米科学・工学・医学アカデミー 編 秋田 喜代美・一柳 智紀・坂本 篤史 監訳
エビデンス基に教育を再考

 本書は、2000年に、全米科学・工学・医学アカデミーが発表した前著(邦訳「授業を変える―認知心理学のさらなる挑戦」2002年、北大路書房刊)の続編であり、前著出版後のさまざまな分野の研究成果を踏まえ、科学的エビデンスに基づく、学習科学に関する研究書である。冒頭において、「本書で提示する様々な知見を読者自身の仕事と関連づけ、…正当化していたエビデンスや政策とどのようにして整合させるかについて批判的に考えることを求める」と述べている。つまり、私たちがこれまで正しいと信じて営んできている学校教育をはじめとする教育的営みが本当に科学的なエビデンスに基づいているかを謙虚に見直すことを求めているのである。
 例えば、学習を成功させるためには「個人が自分の学習をモニターし、制御する能力が必要である」こと(Chapter4)、学習への動機付けを向上するためには、教育者は、学習者が「望ましい学習目標を設定し、適切で挑戦的な目標を設定できるよう支援する」こと、「価値を見出せるような学習体験を提供する」こと、「コントロールと自律性の感覚をもてるよう支援する」こと―など(Chapter6)の重要性を指摘している。本書には、至る所に目からうろこのような指摘がちりばめられている。日本型の学校教育をエビデンスに基づく一層優れたものにしていく上で、大いに参考になると考える。
(4620円 北大路書房)
(新藤 久典・元国立音楽大学教授)

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