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自発的な装着を誘発する自転車用ヘルメット

9面記事

企画特集

ヘルメットを着用して自転車通学する生徒たち(倉敷市立庄中学校)

岡山県倉敷市立庄中学校

 通学用の白い自転車用ヘルメットをスポーティーなデザインに変更することで、通学時のヘルメット装着率を向上する学校が増えている。数年前に従来のヘルメットから切り替えた倉敷市立庄中学校もそんな一校だ。そこで、導入後の生徒たちの意識の変化や今後の課題について、樫田健志校長に聞いた。

スポーティーなデザインが装着意欲を後押し

 同校では、通学路のルートが交通量の多い地域と重なることから、万が一の事故に遭った際の重症化を防ぐことを目的に、自転車通学中のヘルメット着用を義務付けている。しかし、その当時のヘルメットは重く、成長期の生徒が装着するには頸椎への負担が大きいなど、常に装着を強いるという点では課題もあった。
 そうした中で2019年に消費税が10%に上がったことを契機に、保護者への負担を少しでも減らそうと採用したのが、カワハラ製の自転車用ヘルメットだった。
 「以前のヘルメットよりも価格が抑えられ、軽量ながら耐衝撃性にも優れており、頭をしっかり保護してくれるのが特長です。しかも、通気性が優れていることで、夏の暑い時期でも蒸れにくいといったメリットがありました」と振り返る。
 中でも、生徒たちにカッコいいと好評だったのが、これまでのヘルメットとは雲泥の差といえるスポーティーなデザインだ。それが、自発的にヘルメットを装着する意欲を誘発したこともあり、「現在では、自転車通学をする生徒(約4割)のほぼ100%が日常的に装着するようになっています」と効果を口にする。
 また、導入後から今日までヘルメット自体に対する保護者からのクレームも皆無で、今ではすっかり学校のヘルメットとして定着しているという。

課題は大人と子どもの交通安全意識のズレ

 交通安全教育として、年度始めにハンドルやブレーキのチェック、カギや反射板の有無など自転車の安全点検を実施している。また、交通ルールやマナーを守った自転車通学がきちんとできているかどうかを、教員や保護者が交差点などに立って確認することも不定期で行っている。
 とはいえ、「生徒たちが交通ルールやマナーを十分に理解し、実践できているかといえば、物足りない部分もあります」と樫田校長。なぜなら、年2回実施しているアンケートでは、交通ルールを順守していると答える生徒が多く、交通安全への意識の高い結果になっているが、保護者や教員へのアンケートではそうともいえない結果になっており、交通安全に対する意識のギャップがあるからだ。
 こうした理由については、クルマを運転している大人から見ると、交差点での一時停止が徹底されていないなど、まだまだ危険だと感じる乗り方をしている生徒が目に付くことがあるのではないかと指摘する。

クルマ側や歩行者側の視点も大事

 登下校中に多い自転車事故を防ぐためには、このようにクルマ側や歩行者側に寄り添った交通ルールの順守が求められる。つまり、交通社会の一員であることを理解すれば、「ながら運転」や逆走など無謀な運転することもなくなり、自転車乗車中にヘルメットを装着する意義や責任もより一層身に付いてくるはずだ。
 「そのためにも、今後は自転車走行中における誤った乗り方や事故の危険性について、クルマを運転する視点から体験できるように、ビデオ教材やシミュレーターなども活用していくことも考えています」と抱負を語った。

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