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学校統廃合と公共施設の複合化・民営化 PPP/PFIの実情

13面記事

書評

山本 由美・尾林 芳匡 著
地域の声聞かぬ問題点を指摘

 現在、日本には、1741の市町村・特別区がある。そして、それらの自治体の大多数が、人口減少と税収減に直面している。
 そうした状況を「打開」する「魔法の手法」として、財政難に苦しむ全国の自治体に広がっているのが、PPP(Public Private Partnership)とPFI(Private Finance Initiative)を用いた学校統廃合や学校と公共施設の複合化・多機能化である。学校や公共施設は、わが国の法律にのっとれば、青少年や市民の教育・福祉に資するために、行政が責任を持って運営・管理しなければならない公共財である。それを「民間活力の活用」という、うたい文句の下に、学校や公共施設の設計・建築・維持・管理を民間企業に委ねるのがPPP/PFIである。
 本書は、教育行政学・教育制度を専門とする教育学者と自治体の民営化に詳しい弁護士が、地域住民の声を聞かずに「乱暴」に進められていく学校統廃合や公共施設の複合化・民営化の現状と問題点を、歴史的経緯を踏まえつつ詳細に明らかにしたものである。
 会計検査院は、2021年にPPP/PFIの「有効性」に対する批判的な報告書を提出し、日本に先駆け同制度を導入したイギリスでは、既に廃止されている。未来の主権者である子どもの教育の充実には何が大切か、改めてそれを考えるべき地点に、私たちは立っている。
(1100円 自治体研究社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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