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知的障害を抱えた子どもたち 理解・支援・将来

13面記事

書評

平岩 幹男 著
未来見据え、今必要な指導は

 「たとえば現在は子どもが10歳であっても30年後には40歳」「そのときにどんなところで何をして暮らしているのかをイメージ」し「それを実現するために何が必要なのか」「30年後ではなく1~3年後の近い未来の方向性を考えます」。障害のある子どもと長年触れ合い、一人一人の生涯を見通す視野に立ったアドバイスは貴重だ。
 著者は「発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で、根本的な治療は現在ではないが、適切な対応により社会生活上の困難は軽減される障害」という発達障害観を持つ。知的障害がある子どもに対しても「ゆっくりかもしれませんが、できることを増やしていくことは可能」という考え方が根底にある。例えば将来の就労を考えたとき、小学生期からあいさつ、清潔さを保つ生活習慣、安全意識の育成がなぜ必要かが分かる。
 知的障害全般の捉え方、社会資源、合理的配慮、コミュニケーション課題、発達障害との関連、性の問題、社会生活上の困難を軽減する教育やライフスキルトレーニングの在り方、成人になるまでに考えておきたいことなど全11章を通して多くの知見に触れることができる。
 専門家から見れば、経験の浅い教員が特別支援学級を担当することが少なからずある現状は、心もとなく映るかもしれないが、子らの未来を見据え、適時適切な指導に何が必要か、担当教員が理解を深めるのに役立つだろう。
(1980円 図書文化社)
(矢)

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