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世界をひらく60冊の絵本

13面記事

書評

中川 素子 著
老い、戦争…ジャンル多彩に紹介

 書店の絵本コーナーには、さまざまな大きさや形の絵本が並べられている。そして、ページをめくると、色鮮やかな絵が目に飛び込んでくる。そのうちのどれを選ぼうかと考えるのは至福の時間である。
 絵本には子ども向けのものが多いが、決して子どもだけのものではない。大人が読んでも楽しめたり、考えさせられたりするものが少なくない。
 それは一体なぜなのだろうか。絵本を読むことで、子どもも大人も、自分の考え方や感じ方を広げることができるからなのだろうと思う。
 本書は、長年にわたって絵本の研究を行ってきた著者が、世界各国の絵本の中から60冊を選んだものである。
 60冊の絵本は、全部で13章に分けて紹介されている。「自分らしく生きる」「ジェンダーについて考える」「老いの姿を見つめる」「戦争を見つめ、平和を祈る」「人間の作り出した世界」など、どの章のタイトルも非常に魅力的で刺激的である。
 書名にある「世界をひらく」には、二つの意味が込められているように感じる。
 一つは、絵本を読んだ人が自分の新しい世界を開いていくこと。もう一つは、絵本を読むという行為を通じて、人々が今ある世界を変革していくということである。
 本書は、未来の主権者である子どもと共に絵本を味わいたい人にピッタリの本だ。
(1210円 平凡社(平凡社新書))
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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