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いじめ対応の限界

13面記事

書評

内田 良 編著
「わからない」事実調べ 論考

 インターネット空間を「居場所」と思っている子どもたち。2022年度内閣府調査「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、その割合は15歳から19歳の男女のうち68・7%、10歳から14歳についてもおよそ6割であるという。このような「認識」を大人は果たして持っているだろうか。
 いじめ対応の最大の「『わからない』ことが知られていないこと」という問題の下、本書を執筆したのは、「学校のいじめに関する三者調査」を共同研究として実施した4人の著者。事実が「わからない」ことの困難に迫る第1章「見えない、語られない事実」に始まり、第2章「主観に頼ったいじめ認知とその落とし穴」、第3章「オンラインへの誤解と期待―いじめ被害者の救済と加害者の発見に向けて」、第4章「生徒の人間関係といじめを防止する教師の役割」と、すぐにでも手にして読み進めたいタイトルが続く。1~4章までは「わからない」からこそ、科学的な調査と研究が必要であると実施した調査結果などを活用した論考となっていることも興味深い。続く第5と6章は、小学校教諭との対談。現場で何が起きているのかその現実が見える。
 「目標は、人を攻撃することではなく、人を助けること」とする著者が捉える「わからない」とは何か。全ての子どもが安心を得られるよう、立ち止まってみてはいかがだろう。
(1870円 東洋館出版社)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室主任)

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