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早稲田教育叢書42『探究』型授業のモデルと実践 日本中世を事例に

13面記事

書評

高木 徳郎 編著
高校新科目の難解テーマ扱う

 日本史の中で「荘園」というテーマが難解であったことは、誰しもが学生時代に経験しているであろう。評者も大学で日本史学科に学び、1年の「日本史概説」で荘園史を受講したが、さっぱり分からなかった。
 新しい高等学校学習指導要領で、新しい科目「日本史探究」が設置された。「知識偏重」という批判を踏まえ、一つの事象を深く掘り下げ探究することが重視される。そのために多様な史料を活用することが求められる。
 本書では、この「日本史探究」で難解なテーマである「荘園」やそれに伴う「武士の登場」を取り扱っている。さらに諸説のある「鎌倉幕府の成立時期」や「中世武士の実像」、「自治体史を活用した地域史学習」を扱っている。
 全体を通して感じることは、史料の選択や活用について教員はかなり専門性を要求される。日本史担当といっても全ての時代に精通しているわけではない。評者も昭和史が卒論テーマだった。この点は本書の中でも「探究授業の多くの授業案・実践例が教員間で共有されることが早急に求められており…」と記されている。
 今回示された授業モデルは大学の史学科における演習に近いもので、高校の歴史授業の質的転換に必要不可欠である。ただ実践例が私立学校でのものが多く、全ての高校で実践可能なモデルが求められる。
(2530円 学文社)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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