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「探究学習」とはいうけれど 学びの「今」に向き合う

13面記事

書評

探究学習研究会 柏木 智子ほか 編著
「もやもや」共有し、悩みに迫る

 総合的な学習の時間から総合的な”探究”の時間に名称を変更させた高校だけでなく、小・中学校から大学まで探究ばやりである。では「そもそも探究とは」何か、探究学習を進めるに当たって生じるさまざまな「もやもや」に丁寧に向き合おうとするのが本書である。
 「もやもや」する力は、近年、「ネガティブ・ケイパビリティ」(すぐ解決できない事態に結論を急がず、答えのない状況に耐え迷い、不確実なものや未解決のものを受容する能力)として注目されている。本書もまた「正解」をすぐに提示することを目的とするものではなく、「もやもや」を共有し、一緒に悩むことに狙いがあるようだが、探究学習の出自、可能性、位置、課題が第Ⅰ部で簡潔に整理され、第Ⅱ部で指導上のポイントとなる課題の設定、学習プロセス、評価の方法等が学術的根拠を持って提示されており、類書に見られない爽快さで腑に落ち、実践してみたくなる。
 ただ、実際に取り組んでみると難しいのは「探究学習」そのものより、それを実施するに当たっての教職員のコンセンサス形成など組織づくりなのかもしれない。本書の後半を読むと、総合的な学習の時間が導入された頃からこうした状況は変わっていないようにも思えてくる。この「探究学習」を切り口に、学校組織に潜む「もやもや」をあぶり出し、これに向き合うことこそが本丸かもしれない。
(1980円 晃洋書房)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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