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コミュニティ・スクールとは? 概要や取り組み事例を解説

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 子どもの教育は、学校だけが担うのではなく子どもを取り巻く環境も重要です。子どもたちが豊かに成長するための環境づくりや、地域や社会が一体となって教育をするための仕組み『コミュニティ・スクール』が全国の公立学校のうち52.3%の学校で導入されています。

 この記事では、今後も導入が進むコミュニティ・スクールとは何か、その概要や取り組み事例をご紹介します。

出典:文部科学省『令和5年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査(概要)

コミュニティ・スクールとは

 文部科学省は『コミュニティ・スクール』を以下のように定義しています。

コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)
 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組みです。コミュニティ・スクールでは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができます。

引用元:文部科学省『コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)について

 令和2年度の新学習指導要領では、『よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る』という理念を学校と社会が共有し、『社会に開かれた教育課程』の実現が重視されるようになりました。文部科学省は、組織的・継続的に学校と地域社会が連携・協働していくための取り組みの一つとして、文部科学省はコミュニティ・スクールの導入を推進しています。

コミュニティ・スクールの仕組み

 コミュニティ・スクールは、学校と地域住民などが力を合わせて学校の運営に取り組むための仕組みです。学校や地域の実情に応じ、保護者代表、地域住民、地域学校協働活動推進員から構成される学校運営協議会を設置し、学校運営への必要な支援に関する協議を行います。

 学校運営協議会は、校長・市区町村教育委員会に対して、保護者または地域住民から学校運営や教職員の任用に関する意見を申し立てることができます。校長や市区町村の教育委員会は、学校運営協議会からの意見を学校運営の基本方針や教育活動などの方針に反映して、保護者や地域住民に説明する役割があります。

 この連携を通して、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことが目的です。

コミュニティ・スクールの役割

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5に基づき、学校運営協議会には主な役割が3つあります。

▽学校運営協議会の役割

 (1)校長が作成する学校運営の基本方針を承認する
 (2)学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる
 (3)教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事について、教育委員会に意見を述べることができる

 学校運営の『基本方針の承認』を行うといった具体的な権限を有していることから、保護者や地域住民が学校運営に対する当事者意識を分かち合い、ともに行動する体制を構築することが期待されています。

PTAや学校評議員制度・学校支援地域本部との違い

 学校運営協議会とPTA、学校評議員、学校支援地域本部、これらはいずれも学校運営に関連する組織です。それぞれの違いについては以下のとおりです。

▽学校運営協議会

 ・校長の求めによらず意見を述べることができる一定の権限を有する合議制の機関
 ・学校の課題や目標を共有する

▽PTA

 ・学校に在籍する児童・生徒の保護者と学校の教職員から構成される組織
 ・子どもたちの健全育成や学校支援活動などを行う

▽学校評議員

 ・当該学校の職員以外で、教育に関する識見と理解のある者から構成される組織
 ・校長の求めに応じて学校運営に関する意見を聞くことができる

▽学校支援地域本部

 ・さまざまな学校支援活動を実施する組織
 ・地域住民が学校の求めに応じて教育活動(授業や部活動指導、学校行事等)を支援するための本部

 これら4つが今ある仕組みを活かして役割分担を明確化することにより、地域ぐるみの教育を実現させることが大切です。

コミュニティ・スクール導入のメリット

 コミュニティ・スクールの導入により、子ども、教職員、保護者、地域住民へのさまざまなメリットが期待できます。

▽期待されるメリット

 ・保護者や地域住民が学校運営や教育活動へ参画することで、自己有用感や生きがいにつながり、子どもたちの学びや体験も充実する
 ・保護者や地域住民も教育の当事者となるため、責任感を持って積極的に子どもへの教育に携わることができる
 ・保護者や地域住民の理解と協力を得た学校運営が実現し、学校・家庭・地域の適切な役割分担により、教職員が子どもたちと向き合う時間を確保できる
 ・大規模災害のように緊急で対応が必要な場面においても、学校と地域が一体となり迅速で組織的な対応が可能となる

 複数のメリットが期待される一方で、一般教員の関心の低さや保護者・地域への認知度向上、教員の業務負担増加などの課題も存在します。コミュニティ・スクールを有効に活用するためには、学校と地域が同じ目標に向かって主体的に取り組み、相互補完の関係を構築することが重要です。

コミュニティ・スクールの設置状況と取り組みの事例

 令和5年度に文部科学省が行った『令和5年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査(概要)』によると、18,135校の公立学校が学校運営協議会制度を導入しています。ここからは、実際にコミュニティ・スクールを導入している学校の取り組み事例を紹介します。

鹿児島県薩摩川内市 水引小・中学校の例

 ・地域参加型の教育活動として、運動会や文化祭を小・中学校と地域が合同で開催
 ・学校応援団による学校教育への支援が広がり、児童・生徒による地域伝統芸能への積極的な参加が増えるなど、学校と地域が連携することで一体感が生まれつつある

山口県周防大島町 周防大島高等学校の例

 ・地元で活躍する起業家を招いての講話や、学校による地元産直市への計画的な参加
 ・生徒の自己肯定感や地域への愛着等が育まれ、生徒の主体性が高まり学校全体が活性化している

出典:文部科学省『令和5年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査(概要)』『コミュニティ・スクール 2017 ~地域とともにある学校づくりを目指して~

コミュニティ・スクールで地域とともにある学校づくりを

 コミュニティ・スクールは、学校と地域住民などが力を合わせて学校の運営に取り組む仕組みです。保護者、地域住民、教育現場が連携し、子どもたちをどのような環境・方針で育てていくかを話し合い、実践していくことが重要です。

 コミュニティ・スクールの導入は、子どもを取り巻く環境や地域社会のさまざまな課題を解決するための要となることが期待されています。

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