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ニューノーマル時代の感染症対策 集団感染を防ぐ環境衛生機器の強化を

19面記事

施設特集

新たなパンデミックが起きる可能性も

 新型コロナウイルスの出現は、集団感染リスクが高い学校現場における感染症対策の重要性を改めて浮き彫りにすると同時に、これまで学校には導入が進んでいなかったさまざまな環境衛生機器が導入される機会になった。
 ただし、今後も引き続き「新しい生活様式」に基づいた感染症予防対策に努めていく必要がある。なぜなら、昨年の夏にはプール熱やRSウイルス感染症が、今年は手足口病やヘルパンギーナといった子どもに多い感染症が全国的に増加しているなど、コロナ禍で抑制されてきた種々の感染症が代わる代わる流行を引き起こしているからだ。
しかも、近年ではヒトに感染する病原体が新たに出現するスピードが上がっており、新型コロナウイルスのようなパンデミックがいつまた起きてもおかしくないと警告する感染症の専門家も多い。
 このような新種のウイルスが出現しやすくなっている理由は、国際的な人の移動の活発化や、世界的な人口増に伴って鳥や豚などの飼育が増え、ウイルスの変異が起きやすくなっていること。加えて、環境破壊が進んで緑地や湿地帯が減り、野生動物が人の生活圏に入ってくることで、未知のウイルスを運んでくる可能性が高くなっているからだ。

学校での感染拡大を防ぐために

 こうした中で、今後の学校の感染症対策として求められるのは、学年・学校閉鎖を招くような集団感染を阻止することであり、それには学校への換気装置や環境衛生機器の導入をこれまで以上に強化していくことにある。
 近年に建てられた新設校と違い、既存の学校施設では全熱交換器が備えられておらず、換気設備も十分に機能していない教室が多い。その中で、新型コロナウイルスで課題になった教室等でのエアロゾル感染を防ぐには、こまめな換気に加えてサーキュレーターで排気したり、高性能な微粒子エアフィルター付空気清浄機で花粉やほこり、ウイルスなどを補集したりすることが重要になる。また、コロナ禍では密閉性の高い放送・映像スタジオや音楽室などへの対策として、紫外線でウイルスを不活性化する装置を導入する学校も出てきているが、空気清浄機の中には同様の機能を搭載した機種も登場している。
 加えて、室内での感染リスクを下げる換気の目安としては、二酸化炭素含有率を1000ppm相当に維持することが奨励されているが、その数値を測定するCO2モニター装置が1台以上設置されている公立学校は約5割、全教室への設置は2割ほどと遅れている。
 さらに、ウイルスが持続する時間が長くなる室内の低湿度化を抑える加湿器や、トイレを始めとする壁・床などの抗菌・抗ウイルス化を進めるとともに、手をかざすだけで水が出るセンサー付き水栓、自動ハンドソープディスペンサーといったものも導入を進めていきたい。

体育館には換気機能も備えた空調機を

 一方、風通しが悪く、熱がこもりやすい体育館・武道場の環境衛生としては、大型扇風機を使った換気が普及してきたが、熱中症対策としては設置率が低い空調機の整備を急がなければならない。こうした中で、新鮮な外気を取り入れる換気機能と、大空間を冷暖房する能力を備えたヒートポンプ型の空調機が注目を集めている。室外機と空調機本体が一体化しており、工期や施工費が削減できるのも魅力だ。
 子どもたちの学習活動を制限せず、教職員にこれ以上負担をかけない感染症対策を進めるためには、人の手を借りない環境衛生機器を学校現場にもっと導入していく必要がある。今や感染症予防は安全・安心な教育環境を実現する上で欠かせない。 これらの環境衛生機器の多くは「学校等における感染症対策等支援事業」による補助対象となっている。各自治体での積極的な活用を期待したい。

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