日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

学校施設の断熱改修を急げ!(2)建物自体を断熱改修する

18面記事

施設特集

光熱費を大幅に削減し、CO2削減にも

 学校施設の断熱改修としては、自治体が大規模改修の計画に組み入れ、建物自体を外断熱・内断熱を実施していくことが望ましい。その際、庇・バルコニーを設置する、屋上緑化や壁面緑化を施すことも有効になる。また、近年では省エネ効果と耐久性を兼ね備えた高性能な屋根断熱材や、複雑な窓でも自由設計で対応可能な断熱窓など環境性能を高めた建材も豊富になっており、用途や場所ごとに使い分けることも可能だ。
 学校施設を断熱改修するメリットは、夏は涼しく、冬は暖かい学習環境を提供することで、児童生徒の集中力向上や体調管理の改善が期待できることが挙げられる。また、断熱性能を向上させることで、冷暖房費を大幅に削減し、CO2排出量の削減にも貢献できる。特に、特定建築物である学校は建築物省エネ法の改正により、新築・増改築に際してはエネルギー消費性能基準に適合することが求められている。したがって、空調設置時には断熱改修を合わせて実施し、エネルギーの消費を抑えていく必要がある。
 さらに、脱炭素社会の実現に向けては、公共施設の約4割を占める教育施設が率先して省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入をさらに進めていくことが不可避であり、ZEB改修が急がれているところである。つまり、こうした点でも断熱改修を進める意義があるのだ。

ZEB化への第一歩は「断熱改修」から

 とはいえ、夏の暑さは待ってはくれない。子どもたちを酷暑から守る対策が今すぐ必要なことからも、最低限、日射熱の大きい教室だけでも率先して改善していかなければならない。また、ZEB改修には予算の確保や計画に時間がかかるため、まずは内装や窓の断熱工事から始め、次のステップへとつなげる工夫も取り入れていきたい。
 文科省が3月に公表した「学校施設のZEB化の手引き」においても、まずは断熱改修から進めることを奨励している。そこでは断熱改修工事の具体例として、屋根はシート防水新設+断熱材100mm(外断熱)、壁には断熱材吹付60mm+ボード壁新設、窓は既存窓枠を再利用し、真空ペアガラスへと更新するといった具合だ。
 なお、窓については設置箇所に必要な性能に応じて、窓ガラス改修の仕様を変える方法も紹介。例えば、開閉が多いところはカバー工法による複層ガラスを設置する。窓からの熱の侵入が抑えられ、一年中過ごしやすい室内環境になるとともに、冷暖房費節約にもつながる。開閉が少ないところは、既存窓の外側に内窓を設置する。既存窓と内窓の間に空気層ができることで、冷たい外気の影響を受けにくくなる。

体育館の防災・減災対策にも効果

 学校施設では、体育館等の屋内運動場の断熱改修も急がなければならない。こちらもほとんどの建物が無断熱であるとともに、空調設置率もいまだ15%と遅れているからだ。そのため、夏の暑い時期は体育の授業や部活動でのスポーツ活動を控えざるを得ない学校も現れている。
 しかも、ほとんどの公立学校の体育館は避難所に指定されていることから、防災・減災の観点からも早期に着手していく必要がある。例えば災害により停電が発生すると空調設備が使えなくなり、室温が極端に変動する可能性がある。断熱化によって熱損失を抑えることで、室温の変化をゆるやかにし、暖房や冷房器具への依存度を低減できる。
 このように学校施設の断熱改修は、快適な学習環境の提供、光熱費の削減、CO2排出量の削減、防災性の向上など多くのメリットがある。一方で、費用や施工期間、教育への影響などの課題も抱えている。だが、何より優先しなければならないのは、もはや待ったなしの状態を迎えている、子どもたちへの健康被害を防ぐことだ。
 学校設置者には、その学習・生活空間となる学校施設を快適な環境として提供する使命があることを踏まえ、これらの課題を克服しながら、一刻も早く断熱改修を進めて欲しい。

施設特集

連載