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システムズアプローチで考える「発達障がい」 関係性から丸ごと支援する

23面記事

書評

吉川 悟・赤津 玲子・志田 望 著
関わる人を含め治療・援助・支援

 「発達障がいの本人」の相談だけでなく、「本人」の周辺にいる家族、教員や友人、職場の同僚、上司など「かかわる人たち全体を治療・援助・支援の基本とするという考え方」に基づくのが「システムズアプローチ」。
 その支援方法を「システム論から見た発達支援」「システム支援者になるための初めの一歩」「発達支援の前提への挑戦」など全5章で解説した。学校関係者には、具体例で支援方法を語る「現場でシステムを見るための考え方と実践」(第3章)や、小1、小4、中1、高2の児童・生徒とその母親や両親の各相談事例を扱った「システムズアプローチによる支援の事例」(第4章)はなじみやすいだろう。
 例えば、中1女子と母親が心療内科クリニックに相談した事例。友達が「菌回し」のいじめに遭い、見かねた当該女子が先生に報告したところ、「チクった」生徒探しの気配に心因性の身体症状が発現して不登校気味に。学校側からは「発達障がい」の特徴がある生徒とみられていたが…。生徒にどうなってほしいのかという「未来志向のアプローチ」を選択。母親と家族、教育相談担当教員を媒介に学校環境などが医療と連携して改善する。「発達障がい」生徒としてではなく、生徒自身の気持ち、生徒の周辺との関係を肯定していくことで、違った支援視座を獲得できる。
 支援の視野の広がり、安心した関係者の関与が増えればとの著者の願いが伝わる。
(2420円 金子書房)
(矢)

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