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なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち

23面記事

書評

川上 敬二郎 著
子ども主体の防止策も紹介

 今や大きな社会問題であるいじめ。著者は、「報道特集」の取材を通してさまざまな切り口で日本のいじめ対策を考えてきたディレクターである。一人でもいじめで苦しむ子を減らし、事態の深刻化を防ぐ一助にという著者の願いは、この書籍を手にする読者も同じであろう。
 本書は3章編成。第1章「いじめ問題の正体」では、いじめ研究の最前線に立ってきた森田洋司氏の言葉を軸に現状とこれまでの対策を、第2章は「これからのいじめ予防対策」を、第3章「明日からできる効果のある『いじめ予防』授業」には、「いじめも心の健康問題に直結している」として取り組む養護教諭の実践や、子どもが主役の「いじめが起きにくい学校づくり」など日本での取り組みがある。
 海外と比べて高学年になるといじめの傍観者が増えるという日本。火中の栗は拾わず、自分の身を安全に守る日本ではいじめが止まりにくいという指摘に、学校だけでは解決しない根深さを感じる。
 「いじめ防止対策推進法」の公布から10年が過ぎた。今、被害者と加害者が入り乱れる「いじめの流動化」という様態で、日常的に「いじめ」と向き合いながら、常に何かにおびえて学校生活を送っている子どもたちのためにできることは何か。本書を手にして考えたい。
(1012円 ポプラ社(ポプラ新書))
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室主任)

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