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クロスロード 交差する視点(4)高校で何を学び、大学でどう確認?

14面記事

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沖 清豪 早稲田大学文学学術院教授

 平成24年ごろから検討が進められた高大接続改革の当初、二つの課題が指摘されていた。一つは当時のAO入試や推薦入試で知識・技能が適切に問われておらず、大学に基礎学力の担保がされていない新入生が増加していたことである。
 そして、もう一つが大学入試センター試験や大学の個別学力試験において1点刻みの得点で相対的に順位が決定しており、選抜性の高い学力試験が受験生間での際限のない努力に基づく競争になってしまっていること、そしてそれが高校教育に負の影響を与えていたことである。
 前者については、新たな総合型選抜や学校推薦型選抜でも学力の3要素の一つである基礎的な知識・技能を確認することとなった。そのために大学入学共通テストを利用する大学や独自の基礎学力テストを開発している大学も見られる。
 では後者の課題への対応策はどうなったか。1点刻みの競争から脱却するための方策として導入されたのが、素点に加えて、受験者集団での相対的位置を9段階で示す「スタナイン」である。令和3年1月実施の大学入学共通テストから、科目ごとに提供されている。
 しかし導入当初、合格判定に活用した大学はなかった。現時点でも導入済みは1大学、導入予定が3大学にとどまっている。その理由は段階表示が当該科目の受験生内の相対的位置に基づくものであり、改革の議論で想定されていた基礎学力を確認する到達度評価には活用できないためである。
 18歳人口が減少する中で、年内入試志向が強まり、年明け以降に実施される共通テストや一般選抜による進学先決定を回避する高校生が増えている。
 基礎的な知識・技能あるいは思考力等を確認する機会が減少しているのであれば、進学するに当たって獲得しておくべき学修成果とは何か、それを生徒がどのように学ぶのか、その成果を確認するための方法・基準は何かについて、高校側もそして大学側でも改めて自問する必要がある。

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