デジタル環境変化、高校では―
14面記事生成AIに入力する生徒=昨年12月、都立小岩高校で
小・中学校の「GIGAスクール構想」が2期目を迎える中、高校を取り巻くデジタル環境も大きく変化している。
生成AIの教育活用研究 虚偽情報を扱う授業も
昨年12月、東京都立小岩高校で報道公開された「情報Ⅰ」の授業。生成AIがもっともらしい虚偽の情報を答える「ハルシネーション」について扱った。
椋本哲也主任教諭の指示で、生徒たちが生成AI「exaBase」にさまざまな質問をすると、まだインターネット上に情報の少ない時事問題や、小説の粗筋などでも誤った回答が表示された。椋本主任教諭は生徒たちに「無批判に信用せず、情報源を確認しながら活用してほしい」と呼び掛けた。
同校は、東京都の生成AI活用のパイロット校として、教育活動に積極的に生成AIを導入している。
「情報Ⅰ」では、教科書内容の理解度を測るテストを生成AIで作る課題を出し、1学期の間、作ったテストを生徒同士で出し合う活動をした。総合的な探究の時間では、生徒たちが生成AIと対話を重ねて、探究テーマを決めるのに役立てた。
椋本主任教諭は、今後の生成AIの教育活用について「自学自習や個別最適な学習のサポートに活用していくことが目標だ。思考の『壁打ち』で、生徒が自分自身の考えに気付くような使い方をしていきたい」と話す。
東京都は本年度、生成AIの研究校として計20校を指定。授業での効果的な活用の他、AIリテラシーの指導や校務での活用について研究を進めている。
文科省も小中高のパイロット校で先進事例に取り組んでいる。さらに利活用の方法を検討するため、今後、有識者による検討会議を設けるという。
端末で協働的な学び支援 解法共有、話し合う時間が増
多くの生徒が使うGoodnotes。ポインタ機能で一時的な書き込みが可能
高校での1人1台端末は小・中学校と違い、国の補助対象外のため、自治体や学校が独自に整備を進めてきた。
1人1台端末の活用を研究する文科省の「リーディングDXスクール」。千葉県立東葛飾高校は、協働的な学びをテーマに全校的に取り組んでいる。
「黒板やノートがタブレットに置き換わったことで、板書の時間が減り、話し合いに使える時間も増えた」。ICT担当の田代宗一郎主幹教諭はそう話す。
担当する数学では、全員の解答や途中式などを端末上で確認し、他と違う解き方をしている生徒がいたら、すぐに全員で共有する。授業中に板書にかける時間が大幅に減ったことで、どうやって解くのか、なぜそう解いたのか、といった話し合いに使える時間が生まれたという。「生徒同士の情報共有もしやすいので、お互いに聞き合ったりして理解も進みやすい」
教室にとどまらず協働的に学べるのも強みだ。探究学習に取り組む際、放課後でも自宅などから、音声通話や画面共有をしながら文章の共同編集をできるようになった。
一方、教員にとってもメリットは大きい。学習記録が振り返りやすくなり、指導はもちろん観点別評価の資料として生かしているという。
「大学の総合型選抜を受験する生徒が増え、高校の成績がより重視されるようになる。そのような中できちんと根拠を持って成績を付けられるようになる」と話す。
整備費の補助 国に求める声
高校では自治体が独自に端末整備方針を決めている。そのため自治体間で差が大きいのが現状だ。
昨年度の文科省の調査では、端末整備を「設置者負担を原則」としていた都道府県は25、「保護者負担を原則」としていたのは22だった。生徒自身の端末を利用するBYOD方式を導入している県が半数近くあった。
実際に広島県では全ての高校が保護者負担のBYODで、茨城県や岡山県、滋賀県でも約9割の高校がBYODで整備していた。自治体の財政力などの違いが影響している。
BYODでは、それぞれの端末で異なる情報セキュリティー対策が取られていたり、導入しているアプリケーションが違ったりする可能性があるため、高校では利用ルールを設けていることが多い。自民党からは小・中学校と同様、高校でも国が端末の整備費用を補助するよう求める声も上がっている。