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中学理科の苦手意識をなくすためには~新しい価値を創造できる人づくりに向けて~

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子どもに理科を学ぶ楽しさを伝えてほしい

理科への関心が低い日本の子ども

 国際的に見ると、日本の子どもは理科の学習に対する意欲が低い状況がみられる。その要因の一つといわれるのが、以前と比べて理科の基盤となる自然体験や生活体験が乏しくなってきていることだ。例えば、虫捕りや泥だらけになって遊んだことがない、年代の違う友だちと一緒に遊んだことがない子どももめずらしくなくなっている。
 それゆえ、理科教育では生涯にわたって自然や科学に関心を持ち続けられるよう、今から取り組み方を見直す必要が生まれている。すなわち、理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会を持たせることや、実社会や日常生活との結びつきとの関連付けを重視し、子どもたちが興味関心を示せるような内容に改めていかなければならないのだ。

理科嫌いの起点は中学1年

中でも中学の理科になると、扱う分野や内容もより複雑になることから理科嫌いになる子どもが多くなる。具体的にいうと、物理や化学は、公式・計算を多く扱うため苦手意識につながりやすい。生物や地学は、抽象的な概念を扱うため理解が難しい。
 しかも、学習方法自体も小学校のときよりも実験の機会が少なくなり、原子の記号や化学式、植物のつくりや大地の変化の用語など暗記が必要な学びが増えることで、興味関心が低下しがちだ。とりわけ、中学生の理科は1年から3年まで内容がつながっているので、1年の時点で理科がわからなくなると、その後ずっと学びに向かう気持ちが折れてしまうことになりかねない。
 こうしたことからも、特に中学理科では科学的な思考力・表現力の育成を図る観点から、生徒が目的意識をもって「観察・実験」を主体的に行うとともに、その結果を考察し表現するなどの学習活動を一層重視する。理科で学習したことを野外で確認し、発見や気づきを学習に生かす自然観察など、科学的な体験や自然体験の充実を図る。
 実社会・実生活と関連性付けでは、科学技術が私たちの生活を豊かにしていることや、理科で学習することがさまざまな職業と関係していること。また、持続可能な社会の構築が求められている状況を踏まえ、環境教育の充実を図る方向で内容を見直すことなどに取り組むことが求められている。

楽しいと思える理科教育へ

 戦後、欧米諸国の科学技術を習い、世界屈指の工業国へと発展した日本は、学校教育によって誰もが等しく知識・技能を持つことが大きく貢献した。だが、これからの時代は新しい価値を創造し、社会を変革できる人材の輩出が必要になっている。
 その中にあって、理科は、用語の意味や現象のメカニズム、法則などを学習して基礎を固め、その仕組みを理解して応用する力を身に付けることが求められる。まさに時代が必要とするイノベーションを生みだす資質能力を育む上で欠かせない教科であることからも、受験や進学に偏るのではない、子どもが興味関心を持ち、楽しいと思える理科教育へと向かってほしい。

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