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効率的な実験を実現し、考察の時間に

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「理科実験用ガスコンロ」を使った加熱実験

千葉県匝瑳市立八日市場第二中学校「理科実験用ガスコンロ」活用事例

 安全かつ手軽に加熱実験ができる火器として小学校では定着している「理科実験用ガスコンロ」だが、中学校では思ったほど導入が進んでいない。そこで、昨年の2学期から活用を始めた匝瑳市立八日市場第二中学校の越川征厚教諭(2学年理科担当)に、ガスバーナーと比べた場合の利点について聞いた。

中学でも導入機運が高まる

越川征厚教諭

 「理科実験用ガスコンロ」は家庭用より一回り小さい形状で、ビーカーなどを乗せた場合も安定して加熱実験ができるよう、四脚の網台が付いているのが特長。ボンベが熱くなったら自動で火を消す安全装置や、ボンベを正しくセットしないと火を点けられない機能など安全性にも配慮した設計になっていることから、小学校の教科書ではアルコールランプに代わる新しい加熱器具として推奨されている。
 こうした中、中学校において導入が進んでいない理由の一つが、ガスバーナーの点火や消火、調節方法などが教科書の単元で扱われ、観察・実験の技能を評価するために用いられているからだ。しかし、自然や科学への興味関心を育む「観察・実験」機会をなるべく多く取り入れることが求められる中で、便利で効率的な実験が可能な「理科実験用ガスコンロ」の必要性が年々高まっている。

点けたり消したりが繰り返しできる
 同校でも、実験の適正に合わせて「理科実験用ガスコンロ」とガスバーナーとの使い分けをしており、越川教諭自身はこれまで6回ほど使用したところだという。その中で、ガスバーナーと比べた場合の「理科実験用ガスコンロ」の利点として、次の4点を挙げる。

 (1)準備が簡単で、点火器具も要らない。
 (2)点けたり消したりが繰り返しできる。
 (3)点火の仕方など、ガスバーナーよりも生徒の技能の差が出にくいため、安全指導に時間をとられない。
 (4)実験時間が短縮されるため、生徒の考察に時間をかけられる。

 つまり、最も大きなメリットは、実験に要する手間や時間を削減し、スムーズな授業進行に貢献できることである。
 中でも強調したのが、点けたり消したりが繰り返しできることだ。「唾液のはたらきを調べる実験では一人一人に試させたいことから、短い授業時間の中でも代わる代わる実験ができる良さが実感できました」と振り返る。
 そのほか、単元での具体的な効果としては、1年の「蒸留」の実験が短時間で済むようになり、生徒の考察に充てる時間が増えた。同じく「状態変化」で、エタノールとロウの体積変化を教員が実験して生徒に観察させる際も、以前と比べて手早く見せられるようになったという。

学びを深める、実験×ICT活用も視野に
 このように「理科実験用ガスコンロ」の活用に手ごたえを感じている中で、今後は実験結果から学びを深めるGIGA端末の活用も視野に入れる。「例えば、『状態変化』の単元で融点を測定する実験の際に、加熱しながら温度を測定してグラフ化し、固体が液体に変化する温度を調べることなどにトライしてみたいと考えています」と抱負を語った。
なお、一般社団法人日本ガス石油機器工業会では「カセットこんろ」の安全で正しい使い方を学べるDVD教材を作成し、全国の学校に無料配布している。

 問い合わせ=03・6811・7370
 https://www.jgka.or.jp/

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