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教育による包摂/排除に抗する児童福祉の理念 児童自立支援施設の就学義務化から

16面記事

書評

高田 俊輔 著
教員と施設職員の連携・協働の可能性

 平成9年に児童福祉法が一部改正され、児童自立支援施設への入所対象が従来の、いわゆる不良少年・非行少年に加え「家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」に拡大し、併せて就学を義務化した。
 学校教員の活躍が待たれる場が誕生したが、多くの教員にとって、児童自立支援施設は未知の世界。本書中の教員インタビューでも異動により初めて施設内の分校・分教室に足を踏み入れる者がいることが分かる。そこは福祉領域の中にある学校教育領域であり、向き合うのは学校からスポイルされ続け、教員を「敵」視する子どもたちである。共に働くのは子どもたちの生活を丸ごと見つめる施設職員などで、教員には異空間といってよい。
 その空間の成り立ちを戦前の感化院・少年教護院、戦後の児童福祉法成立以降の教護院、それぞれの施設の性格や学校教育との関連を機関誌など研究資料に考察し、さらに一つの児童自立支援施設をフィールド調査した結果を基に、就学義務化以降の福祉と教育という異分野での連携・協働の実態と、その可能性を探っている。
 著者が大学院生時代に活動した児童自立支援施設との出合いが研究成果として結実した。今、学校の中にもさまざまな専門職が流入する時代を迎えた。その可能性を読み解く一つの鍵を著者は探り当てたのではないか。他の専門職と学校教員の連携・協働の実態と可能性も研究課題にしてみてほしい。
(4400円 春風社)
(矢)

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