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学校は誰のもの? 子ども主役の学校へ、いま名古屋から

16面記事

書評

名古屋市教育委員会 著 中谷 素之・松山 清美 編
学びの構造転換への先進的事例

 本書は、「学びの構造転換」に向けて、名古屋市が自治体を挙げて取り組んでいるナゴヤ・スクール・イノベーション事業(NSI事業)のエッセンスを具体的事例とともに解説した本である。幼稚園から高校までの全ての名古屋市立学校の教育段階において「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実の推進を目指した同事業は、本書の執筆陣の一人である苫野一徳氏も述べている通り、全国的な「学び/公教育の構造転換」を実現するための、先進的な事例であり、今後の教育の向かうべき道をはっきりと示すチャレンジングな取り組みである。学校のニーズと民間事業者のシーズをマッチングさせたモデル実践を展開し、NSI事業を全市に展開していく足掛かりにするという戦略は実に興味深い。
 本書では、NSIモデル実践校第1号となった矢田小学校をはじめ、イエナプラン教育を取り入れた山吹小学校の実践や、全国で初めて全市立中学校110校にスクールカウンセラーを常勤配置した「なごや子ども応援委員会」の取り組みなど、NSI事業の内実が網羅的に紹介されている。とりわけ、学級数23、児童数660人(本書刊行時点)の大規模公立小学校・山吹小学校でのイエナプランの「いいとこ取り」の事例は注目に値する。全国からの視察が絶えないというのもうなずける。学びの構造転換に向けた名古屋市の「本気」が伝わる必読の書である。
(2310円 東洋館出版社)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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