日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

「省察」を問い直す 教員養成の理論と実践の検討

16面記事

書評

山崎 準二・高野 和子・浜田 博文 編
「目指す教師像」再考の一助に

 「省察」という語をどう捉えているだろうか。「振り返り」という意味で使われる場面には出合うが、本来の意味は「あちこち走り回ること」「談話・討論・論証すること」だそう。本書では「省察」を問い直し、教師教育に生かす上での問題状況を明らかにする。内容が濃く専門性が高いので、読了に時間を要したが、問題提起された内容は面白く、単に大学での教員養成課程の課題にとどまらない。教員採用試験の倍率低下や教師を目指す学生の減少が問題視される今、教育現場と大学の関係性を深め、学生が学ぶ意義を見いだし、目指す教師像が具体的に見えてくるのではないか。
 第Ⅰ部では「省察」概念を理論的に分析し、本来の意がくまれなかった背景を解析。第Ⅱ部では、大学教員の「省察」に関わる認識と実践の実態を明らかにし、問題を鮮明に描く。「省察」の捉え方はさまざまあり、定義の明確化や概念の再構築を求める声が紹介される。教師教育改革を進め、質的向上を果たす上で、引き続き考えを深めたいと感じた。第Ⅲ部では、「省察」を巡る英国・米国での動向を調査し、日本との比較分析を示す。米国のある大学では、学生は定期的に教育実習校と大学を行き来し、探究に基づく研究に取り組んでいく。まさに「理論と実践の往還」の一つの形だ。
 日本の教員養成での省察を問い直す見識の深い書である。
(3080円 学文社)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

書評

連載