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クロスロード 交差する視点(3)リスキリング時代の大学の姿

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竹村 彰通 滋賀大学学長

 少子化の時代を迎え、今後の大学の在り方についてのさまざまな議論が続いている。中央教育審議会は昨年、大学分科会に「高等教育の在り方に関する特別部会」を設置し、2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿について議論を重ねている。中教審の議論の中では、18歳人口が確実に減る中で、18歳で入学する学生以外の受け入れ拡大が一つの重要な論点となっている。
 これまで大学は18歳で入学し22歳で社会に出ていく前提で運営されており、青春の一時期を過ごす場所と考えられてきた。一方で、平均寿命の伸びにより人生百年時代と言われるようになってきている中で、社会人のリスキリングの必要性が強調されるようになっており、それも大学の役割の一つになりつつある。特にデータサイエンスやAIなどの技術的進歩の速い分野では、日本の競争力の維持の観点からも、社会人の学び直しは重要である。
 滋賀大学では平成29年に日本初のデータサイエンス学部を開設し、31年には修士課程を開設した。修士の1期生のほとんどは企業からの派遣の院生であった。その後も継続的に毎年20人程度、企業からの派遣の院生を受け入れている。企業派遣の院生を受け入れるために、カリキュラムなどではさまざまな工夫をしている。例えば、各科目の講義を集中講義方式とし、一つの科目の15回の講義を特定の週にまとめて行っている。これは派遣院生にとっての講義の取りやすさを考慮してのことである。
 この例からも分かるように、18歳から22歳の学生のための学部教育が前提の大学で、社会人のリスキリング教育を行うには、さまざまな工夫や改革が必要である。民間の教育サービスとの競争や、すみ分けも考慮しなければならない。大学のリスキリング教育は、ゆっくり時間をかけた「再充電」の機会を社会人に提供することにあると思う。そこに民間のサービスとの違いがある。

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